カスタム電源と標準電源の違い

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既製品のスーツとオーダースーツ

スイッチング電源は特定ユーザーの製品専用の「カスタム電源(特注電源)」と様々な製品に使えるように汎用性を備えた不特定ユーザー向けの「標準電源(カタログ電源)」に大別されます。カスタム電源はユーザーの装置に合わせて設計・製造される特注品で、電源の設計はユーザー側に主導権がありそのユーザー向けにしか販売できません。

 一方、標準電源は各スイッチング電源メーカーが市場のニーズを吸い上げて汎用性のある電源を開発し製造・販売しているものでユーザー側が選択します。電源の仕様から形状、価格までスイッチング電源メーカーがすべてを決めます。標準電源はその市場実績や信頼性、安全規格も取得済であることやその入手性などから産業用装置に搭載されることが多いのです。

 スーツに例えるなら標準電源は既製品の「吊るしのスーツ」、カスタム電源は「オーダースーツ」にあたります。オーダースーツは1から10まで希望通りの寸法やスタイル、素材、色などで作れますが、吊るしのスーツはA4とかY5などのように寸法やスタイル、色、素材などは決められたものの中からしか選べません。ウエストを出したり袖丈を詰めるなどの若干の調整は「オプション」追加というところでしょうか?
でも吊るしのスーツはオーダースーツが20万円以上するのに対し3万円程度で手に入ります。またオーダースーツだと採寸や仮縫いなど最低2回は洋服店に行かないといけませんし、出来上がるまでに3か月くらいはかかります。吊るしの既製品のスーツだと今日必要であればすぐに手に入ります。

 

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カスタム電源市場と標準電源市場

スイッチング電源の国内カスタム電源市場は年間約5,000億円、標準電源市場は年間約500億円とも言われています。カスタム電源はパソコンのACアダプターやコピーやファックスのなどの電源も含まれていますのでかなり大きな市場になります。

 カスタム電源と標準電源それぞれ用途は様々ですが主にカスタム電源は民生品向け機器に、標準電源は産業用装置に搭載されます。民生機器に使用される電源は仕様やサイズ、価格が厳しくカスタム設計するしかありません。年間数万台と大量に生産されるので専用に設計してもペイします。
産業用機器に搭載される標準電源は台数も少ないことからカスタム設計はできません。装置や生産ラインに使われることが多いので設置場所は比較的余裕があります。また電気性能や信頼性、実績、寿命、入手性などは標準電源の方が優れていることも標準電源が選ばれる理由です。

 また世間一般的には標準品は大量生産(生産ロット数大)で特注品は多品種少量生産(生産ロット数小)ですが、スイッチング電源はその逆になります。産業向けの標準電源の発注台数は100台程度に対し民生品向けの特注電源の発注数量はロット数千から数十万台まであります。民生向け特注電源は数量がまとまるものの電気仕様やサイズ、価格、納期面の条件が厳しく標準電源メーカーが受注できるのは稀です。

 まず、その設計思想が標準電源メーカーと特注電源メーカーでは全く異なります。標準電源はそのユーザー数や搭載される装置、その使い方まで千差万別です。そのため標準電源メーカーはいろんな使い方をしても壊れない電源を設計し製造する必要があり、評価方法を含めたノーハウ、経験値は標準電源に長けています。しかし、特注電源のように単一ユーザーが単一装置に搭載して使う場合、標準電源と同じように設計するとどうしてもオーバースペックになり価格で負けてしまいます。そもそも数千・数万ロット生産の経験がないこともあります。

 カスタム電源の開発費はユーザー側の負担ですが、予定以上に開発期間がかかったりした場合その追加費用は電源メーカーの負担となります。また仕様追加や変更があることが多く、標準電源メーカーはカスタム電源を積極的に受注していません。特に問題になりやすいのが、仕様書上に記載されていない項目です。ユーザーから要求がない限り標準電源メーカーは標準電源の一般的な仕様書で取り交わしますが、電源の試作品で装置の動作確認をすると装置側とのマッチングがうまくいかないことがよくあります。標準電源メーカーは取り交わした仕様書通りに電源を試作しているのですが、仕様書上に記載されない項目がマッチングしないのです。その場合再設計や一部設計変更になり費用が発生しメーカー側の負担となることが多いのです。

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