私たちが家で使っている家電製品は「交流」でしか動きませんが、太陽光発電システムで発電した電気は「直流」ですので、それをそのまま使うことは出来ません。それで直流から交流へ変換するのがパワーコンディショナー(パワコン)です。
つまりパワーコンディショナーは太陽電池が発電した電力(DC直流)を、家庭や工場で使う交流(AC100V/200V)に変換する電源装置です。一般的には太陽電池で発電した直流DC320~400Vを家庭にはAC100Vに、工場にはAC200Vに変換します。DC/ACになりスイッチング電源とは正反対の働きをします。DC(直流)をAC(交流)に変換する電源をインバータといいますので、パワコンはインバータなのです。英語ではPCS(Power Conditioning System)と言い、私たちが一般的に呼んでいるパワーコンディショナー(Power Conditioner)では通じないようです。
パワーコンディショナーの説明の前に太陽光発電システムについて説明します。
太陽光発電システムとは
家の屋根に設置している太陽光パネルの容量の全国平均は4.5kWだそうです。メーカーにより違いますがソーラーパネル1枚の出力容量は200~250Wで、4kWだと16~20枚のパネルが必要になります。費用的には120~150万円です。これはあくまでソーラーパネルだけの価格でこれ以外にソーラーパネルを設置する架台や接続箱、パワーコンディショナー、ブレーカー、モニター、工事費などが別途必要になります。ブレーカー自体は家に既に設置されていますが、太陽光発電システムに組み込む場合は専用のブレーカーに変える必要があります。総額150万円から180万円以上はかかるのではないでしょうか。これに蓄電池バッテリーを追加するとさらに70〜80万円はかかります。
さて、4kWの太陽光パネルは常時4kWを発電するかというと4kWを100%発電することはほとんどありません。4kWはあくまでパネルの温度が25℃で最適な日射角度での発電量です。パネル温度が1℃上がるごとに機種によりますがおおよそ0.5%発電量が落ちます。真夏のカンカン照りの車の屋根を想像してください。パネルの温度は最低でも65℃になります。25℃から40℃も高くなっていますから0.5%×40=20% 4kW×0.8=3.2kW 発電量は3.2kWになります。それ以外にもパネルの汚れや建物や電線の影、設置する屋根の方角により最悪発電しないこともあります。
太陽光パネルで発電された直流電圧はパネルの「最大出力電圧」と直列接続枚数により変わります。簡単に言えば36Vのパネルを4直列で36V×4=144Vになりますし、45Vのパネルを5直列だと45V×5=225Vになります。これらまとめて3並列や4並列して容量を増やしていきます。
*実際はパワコンのMPPT機能により最適な電圧は変わりますが、ここではわかりやすく説明しています。MPPT(Maximum Peak Power Tracking)は「太陽光の強さにより変化する太陽電池の最適な発電電圧になるように調整する」機能のことを言います。
そしてこれらのソーラーパネルで発電された電気を「接続箱」に送りここで電気をまとめてパワーコンディショナーの入力電圧にします。例えばパナソニックのパワコンだと入力が直流320Vなので接続箱で直流320Vに昇圧してパワーコンディショナーへ送ります。もちろんパワーコンディショナーの入力電圧はメーカーによって違います。
|
パワーコンディショナーとは
パワーコンディショナーは接続箱から送られた直流電力を交流電力AC100Vや200Vに変換してブレーカー(分電盤)へ送ります。このとき、直流電力から交流電力への変換効率は100%ではなく、変換時にエネルギーロス(熱)が発生します。おおよそ95%なので5%が熱となるのでパワコンが動作していると熱くなるのです。
パワコンの役割は以下の3つがあります。
- ソーラパネルで発電した直流を交流に変換します。
- 電力会社に売電できるように、電力会社の交流と変換した交流の電圧・周波数・位相を合わせます。因みに2023年の電力会社の住宅用太陽光発電の買取価格は1kWあたり16円です。
- ソーラーパネルが受ける日射量は天気によって変化し、それぞれの天気(日射量)で最適な電流と電圧の組み合わせが違ってきます。それで太陽光の強さによって変化するソーラーパネルでより多くの出力を得られる発電電圧になるように電流と電力の組み合わせの最適なポイント(一番多く発電量が得られる地点)を常にトラッキングしています。
その制御機能のことをMPPT(Maximum Peak Point Tracking)と言い日本語では「最大電力点追従機能」といいます。
パワーコンディショナーメーカーは国内ではパナソニック、オムロン、三菱電機、ダイヘン、富士電機、安川電機、三社電機、明電舎、東芝三菱、日新電機、田淵電機、GSユアサなどです。海外はデルタ電子、パワーワンなどです。
再生エネルギー買い取り制度(FIT)
太陽光発電は福島の原発事故の後再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が2009年からスタートしました。当初、買取価格は1kwhあたり48円で20年間でしたが2023年現在は16円に下がっています。経産省はパネル自体の価格も下がっていますので、同じ計算方法で年間3.1%の利益が出るように逆算した結果、16円の価格がでてきたのです。
太陽光発電情報によりますと1kWの太陽電池は平均年間1,234kWhを発電するとの実績データがあります。県により差があり一番発電できる県は山梨県の1,436kwh、発電出来ない県は秋田県の902kWhです。全国平均では1,234kWhだそうです。冬に積雪する地域は太陽光発電には不向きです。その1,234kWhの30%を自家消費に70%を売電しているとのデータがあります。
太陽光発電4kWを設置したとして年間どれだけ稼いでいるかというと
まず売電により1,234kW/h×4kW×70%×16円=①55,283円が収入となります。
あと自家消費した電力30%分も、本来なら電力会社から購入するところしなくてすむわけですから収入としてカウントします。1,234kWh×4kW×30%×31円(デイタイム)=②45,904円 ここを忘れて計算する人が多いです。31円は電力会社により料金プランは様々ですがおおよそ30円前後です。
①と②の合計は約101,187円になります。つまり年間101,187円電気料金を節約したことになります。これはあくまで太陽光パネルを設置したことによる”儲け”です。実際は曇りや雨の日、夜間もありその時間帯は電力会社からの電力を買うことになります。固定買い取り制度は10年間で終了しますので、10年間の儲けは1,011,870円になります。
10年後は7円/kwhで電力会社が買い取ってくれています。石油価格の高騰や再生エネの賦課金も上がり電気料金は現在より最低20%くらい上がっているのではと思います。ただパネルの劣化も同時に進んでいますので80%くらいの発電量(4kW→3.2kW)で計算すべきでしょう。
売電収入は1,234kW/h×3.2kW×70%×7円=19,349円
自家消費は1,234kW/h×3,2kW×30%×37円=43,831円
年間63,180円の儲けとなります。
150万円-101万円=51万円 51万円/6.3万円=8年
太陽光発電システムの導入費用150万円(最安値)がペイするのは 150万円-101万円=51万円 51万円/6.3万円=8年になり約18年の計算になります。18年後は年間6.3万円がそのまま全て儲けになるのですが、パネルもパワコンも寿命近くになっている時期です。特にパネルは当初の発電量の80%以下になっていますので当初の発電量は見込めません。ただ故障しなければ年間約6.3万円は儲かる計算になります。
さて、私たちが払う電気代はおおよそ1kwhあたり30円、夜間ですと10~15円です。電力会社は火力ですと1kwhの電気を発電するのにおおよそ10円くらいでできるところFIT制度により16円で買い取っていることになります。その分そのまま損をするわけですが、その損は一般の消費者が電気代に「賦課金」という名目で負担させられていますので電力会社は痛くも痒くもありません。課賦金は使った電力量により決められており、現在2023/4は3.45円/kwhとなっています。標準家庭で8,000円/月だと約10万円/年の電気代が11~12万円/年になるとの試算です。1世帯あたり年1~2万円も太陽光を設置した業者(個人)の儲けになっています。 累計2兆円にもなるということですから利権が発生するのもうなづけます。
太陽光発電が火力発電より効率がよければいいのですが、残念ながら実際はそうではありません。太陽光発電するためにはソーラパネルと発電した直流の電気を交流に変えるパワーコンディショナー、制御装置、設置するための架台、土地(屋根)などが必要になります。
太陽光はタダですがこれらの太陽光発電設備を作るのに莫大な電気(石油)を使っています。特に太陽電池に使うシリコンなどです。その計算方法は複雑でいくつもの考え方があります。だいたい火力発電で発電する4倍の電気を使って太陽光発電に使う設備を作っているようです。これは太陽光発電の設備を作るときだけではなく太陽光発電の生涯寿命でならした結果です。わかりやすく言えば火力発電で発電した4kwhの電気を使って太陽光発電を経由して1kwhの電気を発電しています。