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故障したスイッチング電源を返却する前にやるべき事

宅配便の梱包をしている女性の作業員

スイッチング電源を修理に出そうとしている人

「ユーザーからクレームで装置が返却されてきた。
電源に入力したが装置が動かない。
ユーザーからは不具合の原因を聞かれている。
電源メーカーへ返却する前に何をすればいいのか知りたい。」

 

このような疑問に答えます。

この記事を書いている私は電源の不具合をいくつも経験しました。
一番困るのがその不具合が再現しないことです。
不具合が再現できてはじめて修理解析ができます。
また混入した異物が見つからないこともあります。

そういうことがないように記事を書いてます。

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電源メーカーへ故障連絡する前に

電源の故障は装置や生産ラインがストップするので本当に困りますね。
電源の寿命年数までもてばまだいいのですが、1〜2年で故障するとユーザーからは「不具合報告書」を要求されます。
不具合報告書は電源の解析結果が出ないと書けませんし、クレームで相手も怒っているので急ぎで対応する必要があります。

電源の出力LEDを確認

まずは装置の電源を入れ、装置に搭載されている電源の出力LEDを確認します。
LEDが点灯してると電源は出力していますし、消灯していると電源からは出力していません。

LEDが点灯している場合は電源は出力していますので、電源と負荷までの間で電圧ドロップや配線やネジ・コネクタの緩みがないかを確認します。
*この際には必ず電源をOFFしてから作業します。

不具合要因の切り分け

次に電源を入れ替えて装置を動かします。同じ機種がない場合は出力電圧が同じで容量が大きいものでもかまいません。
ここでは不具合原因が電源にあるのか装置にあるのかを切り分けます。

・装置が正常に動作すれば不具合原因は電源です。→電源単体で確認します。
・装置が動作しない場合、装置に問題があります。

 

電源単体で出力確認

電源に問題あるのがわかった場合は装置から電源を外します。
電源の外し方や入力する前に確認すべきことがあります。
これを間違うと故障原因が分からなくなり解決に時間がかかりますので慎重にします。

電源を外すときに気をつけることは!

電源を外すときは基板の部品面を上にして外しますスパークの場合基板上に異物が残っている可能性があるためです。

*カバーやシャーシ付き電源はカバーやシャーシは外さないで目視で確認します。

装置内部やファンなどにホコリが付着している場合は電源にもそのホコリが入り込んでいますので特に注意が必要です。

電源に入力する前に確認することは

外した電源基板の部品や基板パターン上に焦げやスパーク跡がないかを確認します。
もしスパークの痕跡や基板の焦げがある場合はそのまま何もせずメーカーへ返却します。
回路が故障している状態で入力するとさらに回路を破損させてしまうことがあるためです。

電源単体で出力確認をします。

基板上に焦げやスパーク跡がない場合は出力端子間(+Vと-V間)の電圧をテスターで測ります。
電圧は必ず電源の出力端子間で測ってください。
なお、定格電圧が出力されていればLEDは点灯します。

①定格電圧が出力されている
②電圧が低い(不安定)
③出力しない

①何らかの原因で一時的に保護機能が動作したと思われます。電源自体には問題がありません。
②出力電圧を低く設定しているか電解コンデンサの容量減少(寿命)によるものです。
③メーカーへ解析依頼します。

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電源メーカーへの修理・解析依頼

全ての電源が修理できるわけではありません。シリコンで充填しているオンボード製品、DC/DCコンバータ、パワーモジュール、POL製品は不具合解析は可能ですが修理はできません。

5つの修理解析

下の5つの修理解析うちどれで依頼するのかを決めます。

①修理
②修理+オーバーホール
③修理+部品解析
④修理+部品解析+オーバーホール
⑤部品解析のみ
①は故障部品を交換する通常の「修理」です。
②は①にプラスして寿命部品(電解コンデンサとファン)の交換を行います。なお、オーバーホールは保証対象ではありませんので費用が発生します。
③は修理した上で故障部品の解析までします。部品メーカーに解析依頼をしますので日数がかかります。ICなど故障部品によっては長期間かかります。
④は③に寿命部品の交換をしたもの。
⑤は修理する必要がない故障部品の解析のみ。部品メーカーに解析依頼をしますので日数がかかります。ICなど故障部品によっては長期間かかります。

メーカーへの連絡事項

メーカーに連絡することは下記項目です。
メーカーの所定の修理・解析依頼書がある場合はそれに記入します。

機種名
・ロットナンバー
・使用年数(1日の稼働時間)
・入力電圧
・出力電流(負荷率)
・装置・機器名(負荷)
・不具合内容
・電源の置き方と周囲温度
・購入ルート(代理店・販売店名)

ロットナンバーはメーカーにより記載場所、記載方法が異なります。わからない場合は空欄でも大丈夫です。
不具合内容は詳しく記入します。
電源の置き方と周囲温度はわかる範囲で記入します。
急ぎの場合はメーカー直送も可能ですが、基本は購入ルート経由でメーカーに返却したほうがスムーズです。

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無償保証内容

各メーカーにより表現は違いますが、無償保証内容は「電源を仕様規格内で使用して無償保証期間内に故障した場合に電源を修理または新品に交換すること」です。

電源を交換するための費用(交通費や人件費)や二次的に発生する費用、例えば電源が停止し装置がストップしたことによる損害や遺失利益まで保証していません。

主なメーカーの無償保証の内容です。

オムロン
なお、ここで言う「保証」は、納入品単体の保証を意味するもので、納入品の故障により誘発される損害についてはご容赦いただきます。

コーセル
明らかに弊社の責任(設計、製作上など)により生じた故障についても無償にて修理させていただきます。

TDKラムダ
無償修理期間内における、TDK-Lambda責任による故障につきましては、無償での当該製品の修理または代替品との交換をさせていただききます。

IDEC
上記保証期間中に弊社側の責により弊社製品に故障が生じた場合は、その製品の交換または修理を、その製品のご購入場所・納入場所、または弊社サービス拠点において無償で実施いたします。

各電源メーカーは製品シリーズごとに1年〜5年の無償保証期間を設定しています。電源の負荷率によりさらに細かく無償保証期間を分けているメーカーもあります。
例えば、負荷率が60%だと5年保証だが100%だと3年保証という具合です。取扱説明書に記載していますので確認します。

以上で記事は終了です。
お読みいただきありがとうございました。

 

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