日本が強みを持つ診断技術及びロボット技術等を活用した医療機器等の開発・事業化に伴い, 医療機器に搭載される電子部品の需要と参入の機会の増加が見込まれていますが人体へのリスクが高くなります。
スイッチング電源も医療機器に搭載されますが、直接人の生死に関わる医療機器には搭載できないとしています。電源メーカーは患者の死に対して補償できないのです。
薬機法と施行令
「人や動物の疾病の診断、治療、予防に使用され」かつ「政令で定めるもの」
国の法令の順序は
国会で制定されたものが「法律」
その 次が内閣の定める「政令」
次いで各大臣が定 める「省令」という序列になります。
この政令とは「薬事法施行令」のことで、その別表第一で医療機器名が具体的に書かれています。
機器名は80以上ありますが以下はその一部です。
医療機器の分類
「薬機法」では、人体に与えるリスクの程度によって医療機器を「一般医療機器」「管理医療機器」「高度管理医療機器」の3つに分類しています。
電源メーカーはクラスⅣの生命の直結するような機器に使わないよう求めています。
分類 | 国際分類 | リスク | 医療機器の例 | 承認 |
一般医療機器 | クラスⅠ | 極めて低い | 対外診断用機器、メス・ピンセット、X線フィルムなど | 承認不要(届出のみ) |
管理医療機器 | クラスⅡ | 比較的低い | CT、心電計、MRI、注射針、カテーテル、家庭用マッサージ機など | PMDAまたはRCBの認証か承認 |
高度管理医療機器 | クラスⅢ | 比較的高い | 人工透析機、人工心肺装置、粒子線治療装置、人工骨、人工呼吸器など | PMDAの承認 |
クラスⅣ | 生命の危険に直結 | ペースメーカー、人工心臓弁、人工血管、冠動脈ステントなど |
*1 PMDA: 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(厚労省の所轄)
*2 RCB : 第三者登録認証機関 国内には14機関あります。
医療規格(IEC60601-1)について
医用電気機器を販売するための承認・認証などに際し、国際規格IEC60601-1(医用電気機器 第1部 基礎安全及び基礎性能に関する一般要求事項)に適合することが求められています。
スイッチング電源の国際規格としては従来から一般的に通用している「IEC60950-1」よりも「IEC60601-1」は絶縁性能と漏れ電流が厳しくなっています。
医用電気機器に触れる患者、操作者を感電から保護する手段を以下のように定めています。
製造業者は2つの保護手段を製品に組み込む必要があります。
2つ の別々の手段を実装するか、または1つの対策を2回適用するかを選ぶことができ、
製品全体で指定された保護レベ ル2 MOPP(患者保護手段)または2 MOOP(操作者保護手段)を取得する必要があります。
MOPPとMOOP
現在、「IEC60601-1」規格の最新版は第3.1版(Ed3.1)です。第2版ではわけられてなかったのですが、第3版ではMOOP(オペレータ保護手段)とMOPP(患者保護手段)とわけられました。
MOOPは「Means of operator Protection」の略、MOPPは「Means of Patient Protection」の略です。MOOPは絶縁性能がMOPPより緩和されIEC60950-1と同基準となりました。
分類 | 絶縁 | 沿面/空間距離 | 絶縁の種類 |
1MOOP | 1500VAC | 2.5mm/2.0mm | 基礎絶縁 |
2MOOP | 3000VAC | 5.0mm/4.0mm | 二重絶縁 |
1MOPP | 1500VAC | 4.0mm/2.5mm | 基礎絶縁 |
2MOPP | 4000VAC | 8.0mm/5.0mm | 二重絶縁 |
医療機器内に組み込まれる電源は診断・治療など患者に直接触れるものでないためMOOPの対象になります。ただし、電源の出力部が患者に接触する部分に用いられる場合は、患者保護の強化絶縁(2MOPP)が必要になります。
医療規格の認定は審査会社の審査を受ける必要があります。医療規格を取得していない電源を使用する場合は電源も含めて審査が行われるため、認証合格するまで期間が長期化し費用もかかります。医療規格を取得した電源であれば電源の審査が基本的に不要となり認定期間が短く費用も抑えられます。
また、医療規格対応電源はL,N両ラインにヒューズを内蔵、強化絶縁対応、低漏洩電流仕様といった特長があり、医療機器メーカー側が絶縁トラ ンスや、ヒューズ、ブレーカなどを別途用意する必要がありません。そのため、医療機器メーカーは医療規格を取得している電源を使うのです。