「PSEは安全規格なのは知ってるけどそもそも何なのかよくわからない。
PSEを取得しているスイッチング電源はないのかな?
どうしたらスイッチング電源がPSEを取れるの?」
こういった疑問に答えます。
この記事を書いてる私は実際、PSEを取得した経験があります。
100Wの基板型電源をケースに入れてハーネス出ししたもので、PSE取得費用自体は1機種30〜40万円程度でした。
スイッチング電源にPSEを取りたいのだけど、どんな電源が取れるのかな?これで合ってるのかな?・・・・と不安な方は是非参考にしてください。
ただ、微妙な判断は検査機関に確認してもらうのが一番です。
検査機関により判断が変わることもあります。
検査機関の電話相談は最初の30分くらいは無料です。
具体的なことになると時間切れになります。
そもそもPSEとは何か?
正式には「電気用品安全法」といいます。
AC入力の電気用品で人が怪我したりしないことを目的に作られた法律です。
電気用品安全法は法律なので電気用品安全法を破ると法律違反になります。罰金や禁固刑はありませんが、経産省の立入検査や改善措置命令、当該製品の回収命令を出されることがあります。
PSE対象となる電気製品には国の技術基準に適合した旨の「PSEマーク」がないと販売できません。それは輸入した電気製品であっても国内販売する場合は同じです。
電気用品には以下の2種類があります。
・特定電気用品
「特定電気用品」は危険性が比較的高い電気製品で、それ以外は「特定以外の電気用品」とに分けています。普段我々が家で使っている下の電化製品は「特定以外の電気用品」に分類されます。
特定以外の電気製品
特定以外の電気用品(341品目)は一般的な電化製品(ドライヤー、ホットプレート、電気こたつ、アイロンなど)です。私たちが普段使う家電製品です。そのマークから「丸PSE」と呼ばれています。
特定以外の電気製品を国内で販売するには販売事業者は自分でその製品がPSEに適合しているかどうかを確認することが義務付けられています(自己宣言)。
例えば中国から「特定以外の電気製品」を輸入して日本国内で販売する場合、中国の工場で丸PSEの確認試験をして丸PSEマークをつけて日本へ輸出します。日本の輸入業者はPSEの試験データを確認してPSEに適合しているかどうかを自ら確認しないといけません。
また、その試験データは保管し、経産省から要求があればすぐに提出することが義務付けられています。自己宣言であっても、輸入業者は何もせずに特定以外の電気製品を国内で販売することはできません。
実際、2014年にコーナンが中国で作った丸PSEの電気製品80品目の試験データがなかったことが判明し、製品回収リコールになり現在も回収中です。その理由は検査記録がなく、輸入業者であるコーナンが確認してなかったと思われます。でも後から試験確認すればいいのではと思いますが、当然国内販売後は法律違反でダメです。
特定電気製品
出典:経産省(電気用品安全法)
特定電気用品(116品目)は危険性の高い製品(電線、ヒューズ、スイッチ、自販機、ウォシュレット、マッサージ機など)でそのマークから「菱形PSE」と呼ばれます。そのなかに「直流電源装置」があります。
このPSEは自分で試験し確認するだけではダメで検査機関による検査が義務付けられています。
検査機関とは経産省に登録されている検査機関のことです。社団法人や株式会社など国内では7社あります。
「直流電源装置」と「機器組込用直流電源ユニット」の違い
まず直流電源装置を説明します。
直流電源装置
PSE特定電気用品の中に「直流電源装置」があります。
でも一般のスイッチング電源でPSEを取得しているものはほとんどありませんが、どうしてでしょうか? スイッチング電源は「直流電源装置」ではないのでしょうか?
実はPSEは最終製品(完成品)を対象としていますので、装置に組込む製品は”部品扱い”になり一般のスイッチング電源はPSE対象製品にはならないのです。
そもそもスイッチング電源はそれ単体で使われることはほとんどなく装置や機器内に組み込むことを前提に作られています。その証拠にスイッチング電源は基板単体であったり、装置や機器に取り付けるためのネジ穴があるシャーシ上に取り付けられています。
PSEの対象製品の「直流電源装置」とは電源単品で使われ市場でも最終製品として売買されているものです。代表的なものはノートパソコンやゲーム機などのACアダプターは外置きで使い、電源単体で売買もされますのでPSE対象製品です。そういえばACアダプターには菱形PSEマークがついています。
機器組込用直流電源ユニット
PSEには「直流電源装置」とは別に「機器組込用電源ユニット」とういう電源があります。ややこしいのですが、この「機器組込用電源ユニット」はPSE対象外の電源なのです。
なぜ、わざわざPSE対象外の電源を規定したかとういうと、スイッチング電源がPSE対象になるのか非対象なのか問い合わせが増えたこともあり、H15年に経産省が一般のスイッチング電源は「機器組込用直流電源ユニット」としてPSE対象製品ではないことを通達したのです。
経産省の「機器組込用直流電源ユニット」をまとめると具体的には以下のいずれかの電源になります。一般的なスイッチング電源のほとんどはこの条件に当てはまりPSE対象外となります。
基板型電源
一般的な基板単体のスイッチング電源です。入出力はコネクタと端子台タイプがあります。確かに基板型は機器に組込みしないと使えません。
シャーシ付きの基板型電源とユニット電源
上の基板型電源にシャーシ(L板金)をつけたタイプです。PSEではシャーシは「ブラケット」と呼んでいます。ブラケットがあることで機器に取付やすくなります。
ユニット型電源はもともとシャーシ付き(カバーなし)です。
入力部が端子台のカバー付きユニット電源
ユニット電源にカバーをつけたもので、入力部が端子台のタイプです。一般的にユニット電源は入出力端子台が多いです。
出力がコネクタのシャーシ・カバー付きの基板型電源
基板型電源にシャーシとカバーをつけたもので、出力がコネクタタイプです。一般的に基板型電源は入出力はコネクタが主流です。
まとめると基板型電源とユニット電源はシャーシ・カバーを外してもつけても全て「機器組込用直流電源ユニット」になりPSE非対称です。
反対に以上の①〜④の条件に当てはまらない電源はPSE対象の「直流電源装置」になります。つまりシャーシとカバーで覆われた基板型電源またはユニット型電源で入出力のどちらかか両方がケーブル(ハーネス)のものです。
わかりやすい例としてはコーセルのSPLFAシリーズがあります。基板型電源のLFAシリーズをPSE対象の「直流電源装置」にしたものです。なお、SPLFAシリーズは廃品済です。
スイッチング電源がPSEを取得するメリット
スイッチング電源にPSEを取得する場合があります。わざわざPSEを取得するメリットはいったい何なのでしょうか?
装置自体がPSE対象製品でなくなる
それは電源後段の機器・装置本体がDC入力となりPSE対象外になることです。最初に書きましたがPSEはAC入力の電気用品を対象としていますので、そもそもDC入力の製品は対象外なのです。
参考までに経産省は平成24年4月2日に「電気用品の範囲等の解釈について」の1ー(3)で以下のように通達しています。
つまり電源をPSE取得し外置きすればその後段の機器側はPSE取得する必要はなくなり、機器全体でPSE取得するための費用と時間が大幅に節約できます。そのため機器内に電源を内蔵するよりPSE取得した電源を外置きするのはそのためです。
ただ、電源を外置きするだけではダメで電源と装置筐体がコネクタなどで簡単に取り外せる構造になっていることが条件です。電源が外置きされていても”簡単に外せない場合は装置一体型として扱われ、その装置名でPSEの規制対象になります。簡単に外せないとは圧着端子がかしめられていたり半田付けされている場合です。
確かにパソコン本体とACアダプターは簡単に取り外せるようになっていますのでパソコン本体にはPSEマークはありません。
一方、スイッチング電源を装置に内蔵する場合は装置全体でPSEを取得することになります。電源自体は内蔵されるためPSE対象ではありませんが(機器組込用直流電源ユニット)、スイッチング電源がどちらのPSEの技術基準に準拠しているのかが問題になります。PSE「直流電源装置」の技術基準には「別表第八」と「別表第十二」の2つの技術基準があり、そのスイッチング電源がどちらの技術基準に準拠しているのか?またはどちらにも準拠していないのかが問題になります。どちらにも準拠していなければ装置全体でPSEを取得することはできません。
ノイズ対策として
装置・機器の外に電源(ACアダプター)を置くことで、装置・機器にAC交流電圧100V/200Vが入らなくなります。機器・装置内部にはDCの低圧の電源しか入りませんので、ノイズ対策としてはかなりの効果があります。
ただしACアダプターはスイッチング電源と比べて容量(W)や信頼性、寿命、性能面で劣ります。また台数もまとまらないと安くなりませんので、少量多品種の製品には向きません。
最後にPSE取得する際に検査機関がみるポイントはいくつかありますが
以下の2点を主に見ています。
・電源の内部温度
おすすめPSE取得電源
TDKラムダ ELV/ELCシリーズ
●定電流制御タイプ(ELC)と定電圧制御タイプ(ELV)を 同一パッケージでラインアップ
●看板など狭い空間にも実装しやすい形状のワイヤー引 き出しタイプ
●IP66規格(防塵・防滴)対応
●IEC61000-3-2 クラスC 準拠(照明機器用高調波規 格)※ELC50, 90/ELV60, 90で対応
●PSE(電気用品安全法別表第八・第十)規格対応
以上で記事は終わりです。
お読みいただきありがとうございました。