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LED看板用スイッチング電源と施工上の注意点

夜の渋谷駅前の混雑で人がいっぱい
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LED看板のメンテナンス

内照式看板の光源は以前は蛍光灯でしたが今はLEDで光らせています。LEDの一番のメリットはその寿命4万時間と消費電力が小さいことです。蛍光灯は1日12時間点灯させていると1〜1.5年で交換時期になりますがLEDだと7〜8年もつことになります。家の蛍光灯の交換はそれほど手間はかからないのですが、駅の看板やビルの壁面、特に高所に設置されている看板の交換はかなり手間とコストがかかります。

 例えば駅の壁面看板のスイッチング電源やLEDを交換する場合、営業終了後深夜のスタートになります。この高さは高所作業車(ユニック車)は不要ですが作業員最低2名(内1名は電気工事士の免許が必要)とガードマン1名が必要です。道路使用許可も取らないといけない場所もあります。作業自体は2時間もあれば終了し人件費だけで10万円くらいかかります。

 これに高所作業車が必要になるとオペレーターも追加されプラス5万円、エンドのジェイアール東日本企画は約30万円の出費になります。LEDは蛍光灯と価格だけを比較するとLEDはかなりのコストアップですがメンテナンスを含めたランニングコストで計算すると蛍光灯よりも断然安くなります。ただ、施工業者側にとってはメンテナンスする回数が減りますので看板のLED化は悩ましいところです。

 

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LEDは長寿命ですがスイッチング電源は?

 確かにLEDは長寿命ですがスイッチング電源はどうでしょうか?LEDは一般的に4万時間の寿命があるといわれています。でも電源の寿命が短かければ何の意味もありません。特に屋外で看板に直射日光や雨風があたる環境ではスイッチング電源は価格より寿命や耐水性を重視して選定すべきです。

 LEDと同じ寿命4万時間だとスイッチング電源は24h連続運転で最低4.6年程度の電解コンデンサ寿命計算値が必要です。ここで重要なのはスイッチング電源の周囲温度です。看板内の温度は真夏は50℃を超えるでしょうし東北以北や山間部だと真冬は反対に氷点下になります。スイッチング電源の周囲温度は年間の平均温度で計算するしかありません。平均温度となると30℃以下だと思いますが、スイッチング電源を選定する場合は周囲温度40℃で5年以上寿命がある機種を選定した方がいいでしょう。また電解コンデンサ寿命計算値のバックデータをしっかり開示しているスイッチング電源メーカーの電源を使うのが安心です。

 

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LEDモジュール

 LEDはそれ単体では使えませんので、基板上に搭載し周辺部品と共に放熱設計した上で入出力コネクタを接続しモジュール化しています。それではじめてユーザー(施工業者)がスイッチング電源とLEDモジュールをつなげて点灯させることができるのです。

 

 LEDモジュールメーカーは日亜化学や豊田合成、シチズン電子、独オスラム、米クリーのLEDメーカーからLEDを購入しています。この5社はお互い白色LEDの特許を使えるようにライセンス契約しています(クロスライセンス契約)。そのため、この5社以外のLEDを使ったLEDモジュールはすごく安いのですが特許侵害している可能性がありLEDモジュールメーカーは怖くて使えません。

 

LEDのレンズ

 LEDの光は直進性があるので、そのままだと看板の一部分だけを照らして看板全体を照らすことはできません。それでLEDの光を分散させるプラスチック製レンズをLEDの上に被せて全体的に明るくしているわけです。このレンズがあってこそ内照式看板にLEDが使うことができるようになりました。

 白色LEDの特許では日亜化学は有名ですが、同じようにLEDレンズの特許をほとんど押さえている「株式会社エンプラス」という会社があります。現在はほとんどのLEDモジュールメーカーはエンプラス社のレンズを採用しており知られざるガリバー、超優良企業です。

 

スイッチング電源の種類

 さて、スイッチング電源には「定電圧電源」と「定電流電源」の2種類の電源があります。定電圧電源は電圧を一定にする電源、定電流電源は電流を一定にする電源です。

 24V4A(100W)出力の電源があるとします。定電圧電源は出力電圧は24Vで一定で電流は0A〜4Aまでの間で負荷により変動します。

定電流電源は出力電流は4A一定で、出力電圧が10Vくらいから24Vの間に決まります。定電流電源の出力電圧は0Vからでなく定格出力電圧の半分くらいのところから出力します。

 

専用電源と推奨電源

 LEDモジュールメーカーはスイッチング電源を自社開発の「専用電源」または標準電源メーカーのスイッチング電源を「推奨電源」としてカタログで指定しているのが一般的です。専用電源はLEDモジュールメーカーがカスタム電源メーカーに専用に開発させたスイッチング電源のことで電流・電圧値、形状などの仕様が特殊です。

 これに対し推奨電源は標準電源なので市場で入手でき価格も手頃です。LEDモジュールの選定は価格だけでなくその電源の価格や入手性、寿命も考慮してLEDモジュールを選定した方がいいと思います。

 ただ、どちらにしてもLEDモジュールメーカーが指定しているスイッチング電源から選定すべきです。電圧と電流値が同じだからといって別のスイッチング電源を使うと思わぬ故障の原因になります。LEDモジュールメーカーは様々な条件で点灯試験や連続通電試験を実施してスイッチング電源の信頼性を担保しています。どうしてもLEDモジュールメーカーの指定しているスイッチング電源以外を使う場合はLEDモジュールメーカーに確認した方がいいでしょう。

 

定電流電源と定電圧電源の特徴

 そもそもLEDは順方向に一定の電流を流すことによって光るので本来はLEDを光らせるのは「定電流電源」を使う方が良さそうなのですが「定電圧電源」を使うのはそれなりの理由があります。それは定電圧電源は流通している種類も多くあり比較的安価でどこでも入手できることです。以下に定電流電源と定電圧電源の特徴を列記します。

定電流電源の特徴

    1. 全てのLEDに一定の同じ電流が流れるので「明るさ」のばらつきがない。
    2. LEDが一つでも故障すると全消灯となる
    3. 定電流素子や抵抗がいらないので消費電力が低く発熱が少ない
    4. 電線に流れる電流が小さく電圧ドロップの影響が少ないので配線距離を長くできる。
    5. 一般に流通している定電流電源の種類が少なく定電圧電源より価格が高い。

 

定電圧電源の特徴

    1. LEDのVf値のバラつきや発熱によって「明るさ」がばらつく。
    2. LEDが一つ故障しても並列につないでいるため全消灯にはならない。
    3. LEDに一定の電流が流れるようにする定電流素子や抵抗を組み込む必要がある。
    4. 電圧ドロップの影響があり配線距離をあまり長くできない。
    5. 一般に流通している定電圧電源の種類は多く入手性もいい。

 

LEDモジュールと電源の接続時の注意点

 LEDモジュールの接続数はLEDモジュールメーカーの指定数にしたがってください。また異なる種類のLEDモジュールをつなげるのもNGです

 LEDモジュールをスイッチング電源につながず直接AC電源に接続したり、スイッチング電源の+ーを逆にしてLEDモジュールと接続したりしてもすぐにLEDが壊れてしまいます。

 そしてもう1つ絶対してはいけないことがあります。それはACコンセントと定電流電源をつないでから決して電源とLEDモジュールをつなげないことです。そうするとスイッチング電源にたまった電荷がサージ電流として一瞬でLEDモジュールに流れ込みLEDチップを焦がしてしまいます。

 スイッチング電源とLEDモジュールをつないでからスイッチング電源とACコンセントを繋いでください。そのスイッチング電源が「定電流電源」か「定電圧電源」かわかりませんから、どちらにしてもこの順番でつなぐようにしてください。また間違ってつないでしまった場合、LEDが点灯しているので大丈夫と思いがちですが、単に完全に消灯してないだけで既にLEDチップの一部が焦げてしまっています。半年以内に消えますので交換した方がいいです。

 なお、定電圧電源の場合は出力側にサージ電流は流れることはありません。

 

LED用スイッチング電源を選ぶ5つのポイント

 基本はLEDモジュールメーカーが指定または推奨している電源を使います。ただし、LEDモジュールの中には電源を指定や推奨していない場合や電源の納期が間に合わない場合があります。その場合は独自に電源を選定しなければいけません。

 まずは定電圧電源か定電流電源かを確認します。確認後電源を選びますが、選定する上で重要なポイントが5つあります。周囲温度と②負荷率(ディレーティング率)③寿命④PSE ⑤IPです。

 

 

①周囲温度

周囲温度とは看板内の電源周りの温度をいいます。看板周りの外気温ではありません。屋外看板は昼間は点灯しませんが、直射日光が当たる真夏の看板の中の温度はかなり上昇しています。夕方看板が点灯する頃でもまだ看板内の温度は下がらず、そこへ西陽が当たるとさらに温度が上昇します。

看板にはスリットを開けるなどしてスイッチング電源の周囲温度を50℃以下に抑えてください。それでも無理な場合はスイッチング電源自体を筐体や金属部に接触させ放熱させる方法があります。実際、金属筐体に接触させることで4〜5℃電解コンデンサの表面温度が下がり寿命が1.4倍伸びた例もあります。

反対に北海道や東北、内陸の高地では真冬はマイナス20℃以下になります。マイナス20℃でコールドスタートできる電源はありません。その場合は消灯せず24時間点灯させておいた方が電源にとってはいいのです。

 

②負荷率(ディレーティング率)

負荷率はディレーティング率ともいい、定格電力の対してどれくらい使っているかをパーセント表示したものです。一般的には80%前後で使われることが多いです。屋外看板など温度条件が厳しい場合は負荷率を50%以下で使うとスイッチング電源自体の発熱が抑えられ寿命が伸びます。別の言い方をすればつなげるLEDモジュールの数を減らしたり、スイッチング電源の容量(W)を大きいものにすることです。

 

③寿命

スイッチング電源の寿命に関係するのは電源の「周囲温度」と「負荷率」です。これを下げることでスイッチング電源の寿命を伸ばすことができます。

スイッチング電源メーカーのHPにはそれぞれ電源ごとに「電解コンデンサ寿命計算値」のデータが開示されています。縦軸に寿命、横軸に負荷率のグラフがあります。表中にはスイッチング電源の周囲温度ごとに折れ線グラフで示されていますので参考にしてみてください。*各スイッチング電源メーカーによって形式は様々、開示していないメーカー、機種もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

④IP規格

 IPは防水規格のことで固体と液体の侵入に対してどれだけの保護が施されているかの目安になる規格です。IP規格はIEC(国際電気標準会議)が定めた規格です。例えばIP67と表記されている場合、最初の数字「6」が防塵性能を表わし、最後の数字「7」が防水性能を表しています。

ちなみに「IP」とはIngress Protection(進入に対する保護)という意味だそうです。

 なお、JISにも防塵防水規格がありますが現在はIP規格コードに合わせていますので同じと考えて差し支えありません。

 屋外看板に使う場合のIPは65か66以上になります。水がかからなくても屋外の気温差によりスイッチング電源に結露がつきますので最低それくらいの保護は必要です。ただIPを取得したスイッチング電源は少ないので、使おうとしているLEDモジュールにIP規格を取得した電源が用意されているのかどうかを確認した方がいいです。

番号 防塵性能の数字 IP◯X 防水性能の数字 IPX◯
保護されてない 保護されてない
手ほどのもの(50mm)が入らない 真上からの水滴に対する保護
指ほどのもの(12mm)が入らない 真上からの水滴に対し対象物を15°以内に傾ける保護
工具など(2.5mm)が入らない 真上からの水滴に対し対象物を60°以内に傾ける保護
針金など(1mm)が入らない あらゆる方向からの水の飛沫の保護
粉塵が入らない あらゆる方向からのノズルによる噴流水に対する保護
完全密閉 あらゆる方向からの強い噴流水に対する保護
一時的な水没に対する保護
継続的な水没に対する保護

 さて、スイッチング電源の故障の原因は施工不良によるものが大半です。雨ざらしの場所にスイッチング電源を設置したり、屋根はあるのですがひさしの下の雨樋にスイッチング電源を設置したり、看板の底面にスイッチング電源を設置したところ雨水が看板の底に溜まり電源に水が入ったりなどです。スイッチング電源が完全密閉型の場合は電源内部に直接水が侵入することは少なく、スイッチング電源と入力線や出力線の結線方法が十分でないことが原因で水が侵入することが多いのです。

IP試験方法
試験方法はIPの数字により異なりますが、例えばスイッチング電源の防水性能試験の場合は10分から30分くらい水をかけたり水没させた後、スイッチング電源を動作させ出力するかどうかを確認します。
スイッチング電源を分解して水が侵入したかどうかを確認するわけではありません。

 

 極端に言うと水がスイッチング電源内部に侵入しても出力さえすれば合格です。これはIPの試験方法がそうなので仕方ありません。また、このIP試験は試験をした時の性能を確認しましたというだけで、1年後2年後・・もちろん10年後の性能を保証しているわけではありません。IPの試験を過信せずどちらにしても水が直接・間接的にもかからないような設計をすべきです。

 

⑤PSE

LEDモジュールの電源はPSEを取得した電源でないといけないわけではありません。PSE取得が必要な電源は「組込み用電源」ではない電源です。

まず「組込み用電源」とは何かですが、装置に組み込むことを前提に使用される電源で、具体的には装置に取り付けるための「つば」があり端子台やコネクタで結線する電源です。つまり最終製品ではありません。このサイトで扱うスイッチング電源はほとんど組込み用電源ですのでPSE対象外になりPSEを自己宣言すること自体できません。

組込み用電源でないもの」とは(装置に組込みことを前提にしない)その電源単体で使われ売買される電源をいいます。具体的にはAC交流入力で全面がケースやカバーで覆われ、入出力がハーネスのものです。こういった電源は第三者機関で試験確認してもらった上でPSE自己宣言することになります。

LED看板の中に普通の端子台の電源を内蔵した場合、電源はPSE対象外ですがLED看板自体がPSE対象製品になりPSEを取得する必要がでてきます。ただPSEが必要な看板はよく店舗前に置いてるポータブル型の看板です。ビルの壁面看板や袖看板、コンビニのファザード看板などは一般の消費者が触ったりすることがないので対象外となります。

 

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