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スイッチング電源がどうしても必要な時に

喉から手

喉から手が出ている子供

装置メーカーの資材担当者にとって、必要なスイッチング電源がどこを探しても在庫がないのは本当に困ります。メーカーに依頼しても電子部品が揃わない以上どうしようもないと言われます。確かに1点でも部品が不足するとメーカーは生産開始できないのはわかるのですが・・・・。

社内の営業は短納期で装置を受注したので電源がないと装置が出荷ができないし、特に期末はその装置の売り上げで予算達成できるかがかかっています。営業からはなんとしてでも電源を入手して装置を出荷してくれと言われます。メーカーの工場に訪問して依頼したいのですが昨今のコロナ対策もありそれもできません。

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納期を優先するのか?機種を優先するのか?

まず最初に社内で確認することがあります。それはスイッチング電源の機種を優先するのか?納期を優先するのか?どちらを優先するかです。

電源の機種を優先するのであれば、電源が納入されるのを待つしかなくそれまで装置の生産ができません。一方、納期を優先するのであれば同じ仕様のスイッチング電源はあるのでなんとかなります。例えば同モデルでカバー付きのものやCO2(基板にコーティング処理したもの)などの準標準タイプです。これらは電気仕様は同じで機種名が違うだけです。

準標準機種がない場合は同モデルで容量の大きいタイプで探してみます。例えば50W品であれば75W,80W、100W品であれば150Wなどです。あまり大きいと装置に入らないことがありますので気をつけます。
それもない場合は違うモデルで同じ仕様の電源を探してみます。モデル名、機種名も違いますが電気仕様はほぼ同じなので置き換えることは可能です。

生産には電源以外の生産を進めてもらい、装置の試験は代替えの電源で実施します。正式な電源が納入されて置き換えることにします。少なくとも電源が揃わないと装置の生産ができないことはありません。ただ、最終的には正式な電源で出荷試験をする必要はありますので、電源が納入されない限り出荷できないのは同じです。

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考え方を変える

考え方を変えて代替えの電源の機種名を設計に装置の仕様書に書いてもらうのはどうでしょうか?その代替えの電源を副材扱いで’追記’してもらうのです。電子部品では副材や2機種併記は当たり前です。新たな電源を搭載した装置の出荷試験は通常通り行いますが、装置の詳細な試験はその後に行うしかありません。

それもだめなら、一旦違う電源の機種で装置を納入して正式な電源が納入されてから電源をメンテナンス時などに入れ替えたらどうでしょうか?これはエンドユーザーへの説明と了解が必要ですが、客先も短納期発注と半導体不足のこともわかっているはずですので、理解してもらえるのではないかと思います。

 

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スイッチング電源の選定について

いままでは新製品開発時のスイッチング電源の選定は基本1機種ですが、昨今のスイッチング電源の納期状況を考えるとかなりリスクがあります。電源が必要な時にそのメーカーの電源が入手できなければ装置の出荷ができません。そのリスクを避けるには他メーカーの同等機種を仕様書に記載しておくことが重要です。同メーカーの2機種よりメーカーが違う機種を選んだほうがベターです。単純にいえば納期遅れのリスクは1機種だけを選定した時に比べると半分になります。

また、2機種をスペックインすることによりメーカー間の競争原理が働き、スイッチング電源の価格も自然に下がります。これはよくあることですが、スイッチング電源を1社からしか購入しないユーザーは、2社以上から購入しているユーザーより高い価格で購入していることが多いです。競争が起きないので当然と言えば当然です。

ただ、スイッチング電源を2機種スペックインするデメリットはあります。装置の試験をする手間が2倍になることです。これもどこまで試験をやるかによりますが、電源の入力時と入力断時の装置の挙動、ノイズ試験を中心にやればいいのではと思います。時間があれば試験項目を増やしていけばいいのです。次に電源が2機種になるのでメンテナンス用に在庫する機種が倍になりそれに伴う管理費が2倍に増えます。これらのデメリットが納期遅れで出荷できないリスクより大きいのであれば仕方ありません。

長期的な半導体不足により、ますますスイッチング電源メーカーの納期が重要になってきます。これは言い換えればスイッチング電源メーカーの電子部品の調達力になります。そうなると電子部品メーカーTDKのグループ会社のTDKラムダが有利になってくるのではないでしょうか。

 

あつものに懲りて膾(なます)を吹く

スイッチング電源の納期遅れで困る販売店や特約店はその後、長納期で大量発注をメーカーにかけます。1年先2年先の発注までメーカーにかけますので一時的にメーカーに大量の受注残が残ることになります。メーカーはその電源納期に従い部品発注を電子部品メーカーにかけています。現在のような電源を作ればすぐに売れる状況が続く間はいいのですが、装置がそれほど売れているわけではありません。電源が入らないので先の納期まで発注をかけているだけのことです。遅かれ早かれメーカーが生産した電源が販売店や特約店に在庫として大量に積みあがることになります。

DCDCコンバータやノイズフィルタのように電解コンデンサを搭載されていない製品ならいいのですが、スイッチング電源は電解コンデンサを使用しています。長期保存した電源に急に100V/200Vの電圧を入力すると電解コンデンサが破裂(防爆弁が開く)することがあります。電解コンデンサメーカーでも長期保存した電解コンデンサの取り扱いについて注意喚起しています。この電解コンデンサには寿命があり、使わなくても経年劣化していきます。スイッチング電源メーカーでも半年在庫した電解コンデンサは廃棄しますし製品在庫では「電解コンデンサの活性化」をした後に出荷します。半年は短いように思いますが、メーカー出荷後に市場での在庫期間を考えるとそれくらいになります。

今後電源納期が落ち着いたころに納入されるスイッチング電源は販売店や特約店の倉庫で長期間在庫として眠っていた可能性があります。ロットNoから生産時期がわかりますので、確認し1年以上前に生産された電源であれば、最初だけ電源投入時はスライダックで徐々に入力電圧をあげる対策をします。2年以上前に生産された電源はメーカーで再試験してもらったほうがいいと思います。

 

 

スイッチング電源の納期は部材納期だった!
納期はメーカー側の納期(リードタイム)とユーザーの希望納期があります。メーカーの納期は機種にもよりますが標準電圧(5/12/15/24V)は2週間程度からそれ以外の電圧や準標準品は2〜3ヶ月、特殊な機種は4ヶ月以上納期がかかるものもありました。最近では半導体をはじめとする電子部品の長納期化により、部...
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