サイトアイコン 電源ナビ

【解説】DC/DCコンバータ 簡単にDC/DCコンバータのキホンを理解できる!

DC/DC CONVERTER  KNOWLEDGE

DC/DCコンバーターの入力電圧は直流(DC)、出力電圧も直流電圧(DC)の電源をいいます。チップ部品を多用して、他の電子部品と同じようにプリント基板に実装出来るように小型化したオンボード電源です。小型・薄型の特性を生かして通信機器装置など幅広い業界の装置に使用されています。このDC/DCコンバーターとAC/DCコンバーターを組み合わせて機器や装置に最適な電圧・電流を供給します。

負荷の電子部品はそれぞれ最適な電圧・電流が異なります。標準的な電圧はモーターは12〜14V、HDDは5Vまたは12V、オペアンプは±12V、HICは3.3V以下などです。また、電子部品に供給される電圧はDC/DCコンバーターの入力電圧や負荷急変に対する電圧の安定性が求められます。

たくさんの表面実装部品が搭載された基板

私たちの身の回りでDC/DCコンバーターが使われているのはノートパソコンです。ノートパソコンのバッテリーの電圧を 3.3Vや5V 、12V など電子部品の入力電圧に変換するのにたくさんの DC/DCコンバーターが使われているのです。バッテリーの電圧は充放電により大きく変化しますが、DC/DCコンバーターの出力電圧は常に一定になるように制御されます。このDC/DCコンバーターのおかげでノートパソコンの電子回路は正常に動作しているわけです。

スポンサーリンク

DC/DCコンバーターの種類

 DC/DCコンバーターには大きく「絶縁型」と「非絶縁型」に分かれます。絶縁とは一次側と二次側が電気的に繋がっていないことを言い、非絶縁とは一次側と二次側が電気的に繋がっていないことを言います。わかりやすく言えばトランスを使っていれば絶縁、使っていなければ非絶縁です。

別の言い方をするとトランスを使わない非絶縁型回路を「チョッパー」と言いいます。チョッパー回路を使えば直流電圧の昇圧や降圧ができるのですが、あまり大幅な昇圧や降圧はできません。実用的にはおおむね昇圧なら10 倍、降圧なら1/10 程度の昇降圧が限界です。それ以上の昇降圧が必要な時は回路の内部にトランスがある絶縁型DC/DCコンバーターを使います。

絶縁型DC/DCコンバーター

 トランスを有するDC/DCコンバータを絶縁型DC/DCコンバータと言います。トランスには入出力の絶縁という重要な機能があり、この機能が必要な場合は昇降圧の比率が小さい場合でもトランスを使います。容量の大きい電源にも対応した信頼性の高い本格的な電源です。ただし、トランスを内蔵しているために小型化とコストに難があります。

 DC/DC コンバータのスイッチ素子(トランジスタ)は数10kHz~数100kHz の高周波でスイッチング動作します。トランスは周波数が高いほど小型になるという性質があり、50Hz や60Hz で動作するトランスと比較すると DC/DC コンバータの発振周波数は単位がKHzで小型軽量化されています。

また、人が接触する可能性のある電気回路は危険な電圧からこのトランスで「絶縁」する必要があります。ノートパソコンの側面にはいろんなコネクタがあり、人が容易に触ることができますのでノートパソコンの回路はAC100Vからトランスで絶縁します。そのためノートパソコンの充電器のDC/DCコンバーターには必ず絶縁型 DC/DC コンバータが使用されています。絶縁型 DC/DC コンバーターのトランスのおかげで安心してノートパソコンを使用することができるのです。

 

非絶縁型DC/DCコンバーター

 チョッパー回路は非絶縁型 DC/DC コンバータとも言います。非絶縁型DC/DCコンバーターはトランスを用いていませんので小型で低価格のメリットがあります。電気的には一次側と二次側は電気的に繋がっていますが、出力電圧が1.8V、1.5V、1.3V、0.8Vなど低圧のため感電の危険性はありません。

 また、トランスを使わないことで、高効率で発熱が少なくヒートシンクが不要になるのでプリント基板の負荷(IC)の近くに非絶縁型DC/DCコンバーターを実装できるメリットがあります。 

 代表的な非絶縁型DC/DCコンバーターは「POL」です。POLは「Point of Load」の略称で、負荷の近接という意味です。負荷ICの直前にPOLを置くことにより電圧ドロップを減らしノイズの影響を受けにくくなります。

スポンサーリンク

DC/DCコンバーターの形状

DC/DCコンバーターには形状別にいくつかの種類があります。「オンボード」「POL」「パワーモジュール」などがです。それぞれについて説明します。

 

オンボード

DC/DCコンバーターCCG30の表裏の写真

 オンボードは直接基板に搭載するタイプのDC/DCコンバータです。DC/DCコンバーターといえばこのタイプを指すことが多く、各メーカーからいろいろな機種が発売されています。
サイズ表記はオンボードタイプだけでなく、inch表記したものが世界標準です。ボードタイプは小型なので1×1inch(ワン・バイ・ワン)や2×1(ツー・バイ・ワン)inchや2×2(ツー・バイ・ツー)inchなどがわかりやすいです。これ以外にも整数でないinchサイズもたくさんあります。要はinch表記しただけです。

 国内電源メーカーのDC/DCコンバーターはmm表記のオリジナルサイズですが、最近は世界標準の1×1などのインチサイズで表記するようになってきました。写真のタイプはTDKラムダ製CCGシリーズで、30Wでは世界標準の1×1(ワン・バイ・ワン)サイズの世界最小クラスです。

 入力電圧はDC3.3V、5V、12V、15V、24V、48Vです。最近はバッテリー入力の装置が増えたこともありDC12〜24V、DC24〜48Vなどワイド入力タイプも発売されています。出力電圧は電子部品が動作するDC3.3V、5V、12V、15Vの低圧になります。容量は1.5W〜80W程度で寿命部品である電解コンデンサを使っていないため電コン寿命がないことも特徴です

出力電圧は単出力と2出力があります。単出力は3.3V、5V、12V、15V、2出力は±12V、±15Vが一般的です。

POL(Point Of Load)

4個のPOLとドライバーとの大きさの比較

 48Vなどの中間電圧からICなどの電子部品が要求する低電圧へ変換する、高効率・小型・高速応答性の非絶縁DC/DCコンバーターです。
入力電圧は9〜50Vの比較的高い入力電圧タイプと4〜14Vの低電圧入力タイプがあります。高い入力電圧タイプの出力電圧は3〜40V可変可能で、低電圧入力タイプの出力電圧は0.6〜5V程度可変可能です。電流値は30Aまでが一般的ですが、150Aの大電流を流せるコーセルBRFS150もあります。

 

パワーモジュール

PH150A280-24の裏表の写真

 パワーモジュールも基板上に直接ピンに半田付けします。放熱はピンとは反対側のアルミ製ベースプレートに放熱フィンをつけて風を当てるか、装置本体の金属部分に密着させて放熱します。

パワーモジュールの標準単位は「ブリック」と呼ばれています。
ブリックはレンガという意味で、フルブリックとは長さ約117mm×幅約61mm×高さ約117mmです。その1/2、1/4、1/8、1/16のサイズは、それぞれハーフブリック、クォータブリック、エイスブリック、シックスティーンスブリックと呼ばれます。写真のパワーモジュールは1/4ブリックです。このブリックサイズは厳密なものではなく機種によって若干サイズが異なります。

パワーモジュールは単体だけで使うことはできず周辺の回路設計が必要になります。パワーモジュールはいわば電源回路の一部分をパッケージしたものです。ユーザーはディスクリートの部品で電源を設計することを考えると、パワーモジュールを使うことで回路設計が楽になり設計工数が省けます。容量は700Wまでありオプションも色々用意されています。

スポンサーリンク

分散給電システム

 電子部品は、負荷の特性、機能、容量により動作電圧(入力電圧)がそれぞれ異なります。多くの電子部品は低圧の直流電圧(DC)で動作します。

電子機器の多機能化・デジタル化が進むにつれ電子部品が要求する直流電圧は12V、5V、3.3V、2.5V、1.8V、1.3V、1.0V、0.8Vなどと低電圧・大電流化が進んでいます。
今までは独立したDC/DCコンバータを機器内に複数台搭載していましたが、最近では効率化やノイズ対策などの観点から基板上の負荷(IC)の近くに小型のDC/DCコンバータ(POL)を分散配置する「分散給電システム」が主流になってきました。

従来はACDC電源からDCDCコンバータを経由して負荷に給電システムとDCDCコンバータと負荷の間にPOLを挟んだシステム

出典:TDK:パワーエレクトロニクス・ワールド

 従来は商用電力をAC/DCスイッチング電源でDC48Vなどに変換し、DC/DCコンバーター3台を基板上に搭載しDC5V、DC3.3V、DC2.5Vを負荷IのCに供給していました。ところが、入力電圧48Vと出力電圧2.5Vに差がありすぎ効率が悪くなってしまうのです。

この問題を解決するには、DC/DCコンバータをできるだけICに近づけて配置する必要があります。発熱が少なく放熱フィンが不要の小型のPOL(Point of Load)しかありません。

DC/DCコンバータの世界市場規模

ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、北米、南米、南極大陸の7大陸

 

さて、「MarketsandMarkets」の2019年の調査によりますとDC/DCコンバータの世界市場規模は推計85億ドルから、今後2025年には224億ドルへと拡大が見込まれるとのことです。85億ドルから5年後に2.6倍の224億ドルと予想していますからかなりの伸びです。(今般の新型コロナの影響は加味されていませんのであくまで「Behore Corona」です。)

DC/DCコンバーターの一番伸びる市場は「自動車市場」で、FCV(燃料電池自動車)やEV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)です。

*MarketsandMarkets社は米国で2001年に設立されたマーケット調査会社で市場調査レポート発行数で世界2位、700名以上の常勤アナリストによって年間900タイトル以上の市場調査レポートが刊行されています。

また米国のMicro Technology社の2018年の(DC/DCコンバーターを含んだ)スイッチング電源の世界市場は407億ドルですから、AC/DC電源が約80%、DC/DCコンバーターが20%程度になるようです。感覚的には合っていると思います。

DC-DCコンバータの主要企業

 

モバイルバージョンを終了