スイッチング電源の入力端子を見ると「AC」でなく「L」と「N」と記載されていますがどんな意味なのでしょうか?今まで特に気にしてなかったという方は是非お読みください。
コンセントの「L」と「N」
家やオフィスのコンセントにも表示はありませんが「L」と「N」はあります。呼び方がいくつもあってややこしいのですが、コンセントの接地側をN(Neutralまたはニュートラル・コールド・GND・マイナス)、非接地側をL(Liveまたはライブ・ホット、プラス)と言います。NはNeutralで中立、Liveは電圧が”生きている”という意味です。
コンセントをよく見るとコンセントの穴の長さが左右違っています。左側の穴の長さは9mm、右側は7mmで、左側の穴が2mmほど少し長くなっています。
左側の穴の長い方がN(接地側)、右側の短い方がL(非接地側)になります。コンセントのN端子は大地と同じ電圧なので0V、L端子は100Vです(±100Vですがわかりやすく100Vとしています)。
稀に電気工事をした際にコンセントの壁裏の配線を間違って逆につないでいることがありコンセントのLとNが逆になります。そうなるとコンセントを外から見ただけではわかりません。
コンセントが正しく配線されているかどうかを確認するには「検電ドライバー」という器具を使って確認できます。検電ドライバーは先端に電圧がかかるとランプが点灯する簡単な仕組みになっています。コーナンやカインズで1000円程度で売っていますので気になる方は購入してみてはいかがでしょうか。使い方は簡単でコンセントの穴に検電ドライバーを差し込んでボタンを押すだけです。正しく配線されていると右側のL側が光り電圧がかかっていることがわかります。左側の穴に差し込んでボタンを押しても0Vなので光りません。逆に配線されていると左側が光ることになります。くれぐれもコンセントの配線工事は自分でやらないようしてください。有資格者でないとできません。
家電製品の電源コード
本来は電源コードの差込みプラグをコンセントに差込む方向がありますが、私たちが普段使っている家電製品の場合には逆に挿しこんでも問題なく使用できるようになっています。
オーディオ製品や液晶テレビのなかにはコンセントに挿し込む向きを指定されているものもあります。正しくコンセントに差込まないと性能が発揮できないのでメーカーが”わざわざ”指定しているのです。
見分け方としてはACコードに白い線や細かい文字が書いてある線をコンセントのN側(左側)接地側になるように差込みます。反対でも使えますが音質や画質が変わったりすることがあるようです。たぶん普通の人にはわからない微妙なレベルだと思います。正しい方向に電源コードの差込みプラグをコンセントに差込むことでノイズがコンセントのNアース側から大地へ抜けやすくなります。それで雑音が入らないとか音質がクリアになったりするそうです。
写真では見にくいですが、家にあるパナソニックのブルーレイレコーダーの電源コードには小さい文字がありました。そちらの線にある差込みプラグをコンセントのN側(長い方)に差込んでやればいいのですが、電源コードはブルーレイレコーダー本体から外せるようになっていて、そちら側は差込む向きはありませんでした。つまりコンセントに差込む方向性はなく、実際ブルーレイレコーダーの取説にも電源コードのプラグの差込む方向についての記載もありませんでした。
ただし、機種により電源コードのプラグをコンセントへ差込む向きが指定されている機器もあります。逆にしても使えますが機器側の電源を切ってもコンセントのN側(0V側)が切れるだけでL側(100V側)は電圧がかかったままになります。実際問題はないのでしょうが、微弱な電流が機器側に流れ続けることになりこの状態が1年、2年から数年続くとなると電気代のこともありますが機器の寿命など少なからず影響があるのではないでしょうか。一度自宅の電源コードの確認しておいたほうがいいと思います。
スイッチング電源の「L」と「N」のつなぎ方
このコンセントのL側をスイッチング電源のL端子に、コンセントのN側をスイッチング電源のN端子に接続するように安全規格上決められています。メーカーのデータ採取もそのようにつないで測定していますので、反対につないで測定するとノイズの測定値は違ってきます。
スイッチング電源のL端子直後にはヒューズがあります。
電源内部がショート (ACラインとアースラインのショート)した場合、L端子直後のヒューズを溶断させて感電保護を行います。L側のヒューズを切るのはACラインのLが100Vだからです。
なお、L端子とN端子を逆に接続してもヒューズは切れますが、ACラインの非接地側(L)100Vが電源のN端子につながったまま(100Vが印可され微弱電流が流れる)になりますので危険です。
感電の人体への影響
人が誤って100Vのコンセントや電線に感電した場合、どれくらいの電流が体に流れるのでしょうか?人の抵抗値は2000Ω~4000Ωといわれています。体格の違いや肌が乾燥しているか濡れているか、感電した体の箇所によって抵抗値が変わります。おおざっぱに言うと2000Ωは小柄な痩せている人が汗をかいた状態のとき、4000Ωは大柄な人が肌が乾いているときです。
オームの法則から電流値を計算すると
I(A)=V/R=100/2000=0.05A=50mAとなり人体に50mAの電流が流れることになります。
では50mAはどれくらいの衝撃なのでしょうか?
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に以下の情報がありました。それによると1mAで電気を軽く感じる程度、5mAで痛みを覚える程度、50mAが人体に流れると「気絶したり心肺停止の可能性もある」そうです。心肺停止は感電する経路に心臓があるときですが、命の危険があるということです。
感電は電流よりも高い電圧のほうが危険なように思いますが、直接電圧は感電に関係しません。 その証拠としては静電気の電圧は3,000Vを超えますが、電流値が小さいので「パチッ」とするくらいですんでいるのです。感電で死ぬかどうかは、電源電圧でなく、体に流れる電流で決まります。
スマホ充電器は5Vですが、1Aくらいの電流を出力できるため充電プラグの先を風呂の湯につけると人が感電死することがあります。
実際、ロシアの12歳の少年が充電中のiphoneを風呂に落として感電死したり、タイではスマホを充電しながらヘッドホンで16歳の少女が感電死した事故や、フランスでも入浴中のスマホ充電で15歳少女が感電死事故があります。タイの16歳の少女の例では体に火傷の跡もあり即死だったようです。充電しながらスマホを操作することは非常に危険です。充電器は絶対風呂にもっていかないことです。
では銭湯の「電気風呂」では感電死しないのでしょうか?電気風呂は電気を流しているので「感電」はしています。一般的に電気風呂の電圧は3V~10Vで電流は1mA~10mA程度です。電気風呂の電源は定電流電源でそれ以上電流が流れないようになっています。
感電の保護規格
欧州の統一規格であるEN規格が感電に関する規格が国際規格になっています。そのENでは「EN61140」で感電に対する保護方法をクラスⅠ、クラスⅡ、クラスⅢの3つに分けています。
実際は搭載するトランスの種類によって感電の保護クラスが決まります。
クラスⅠ 機器
感電保護を基礎絶縁のみで保護します。基礎絶縁が破損した場合には危険電圧が加わる恐れのある導電部をアース接地するようにしています。スイッチング電源はこのクラスⅠ機器に属しトランスには保護接地できるアース端子があります。
クラスⅡ機器
基礎絶縁と「付加絶縁(絶縁物の厚みを0.4mm確保した)」で感電保護をする「二重絶縁」か、単一でこの二重絶縁以上の保護性能がある「強化絶縁」の安全対策を施している機器です。
クラスⅡのトランスは巻線を絶縁材で全て覆う必要があります。
クラスⅢ 機器
感電保護をSELV(Safty Extra-Low Voltate、安全超低電圧)回路であり機器内に危険電圧が存在しない機器。機器の中にDC60V以上の危険電圧が存在しません。