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なぜ電源の負荷率を70~80%で使うのがいいのか?

スイッチング電源は出力電流の70~80%で使用することがメーカーから推奨されています。余裕をみて少し大きめの電源を使うのですが、何の”余裕”をみているのでしょうか? 余裕をみずに100%で使うとどうなるのでしょうか? 案外答えるのは難しいかもしれません。

 

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まず最大出力電流はカタログや仕様書で確認

同じシリーズの100W電源でも出力電圧によって最大出力電力(W)が異なります。
例としてTDKラムダのHWS100Aシリーズの仕様規格で見てみます。5V~48V出力まで100W強出力できますが、3Vは66Wまでしか出力できません。100Wなので3V33A出力だと思って選定すると間違ってしまいます。

 

最大出力電流は連続して出力できる最大電流値です。
例えば、HWS100A-24は出力24V4.5A(108W)ですので4.5Aまで出力できます。ただしそれには「周囲温度」という条件があります。周囲温度の条件は仕様規格書の環境欄の「動作温度」のところに書いてあります。メーカーにより「使用温度」と表記されることもありますが同じ意味です。

 

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電源の周囲温度により最大出力電流は大きく変わる

上の仕様書の環境欄の「動作温度」に-10~+70(-10~+50℃:100%  +60℃:65%  +70℃:30%)と記載があります。意味は以下の通りです。
-10~+70は-10℃から+70℃までの周囲温度で使えます。
-10~+50℃:100%は-10℃から+50℃の周囲温度では負荷率100%(4.5A)まで出力可能+60℃:65%は+60℃の周囲温度では負荷率65%(2.925A)まで出力可能
+70℃:30%は+70℃の周囲温度では負荷率30%(1.35A)まで出力可能

ですので、100Wの電源といってもあくまで周囲温度が50℃までであり、60℃では65W、70℃では30Wの電源になります。つまり周囲温度によって出力できる電流が大きく変わることになります。

また当然ですが周囲温度は電源の周囲温度です。よく間違うのは室温を周囲温度と考える人がいます。工場の室温が25℃でも制御盤内の温度は35℃であったり、制御盤内の電源の周囲となるとさらに5℃程度温度が高くなります。夏場になると工場の室温自体が高くなり30℃以上になることもあり、そうなると電源の周囲温度は45℃まで上がります。

出力できる電流値は電源の周囲温度が上がると大幅に下がります。負荷率100%で電源を使用していると、夏場や制御盤・装置のファンの不具合などの原因で電源周囲温度が上がることがあります。そうなると電源の内部温度が上がり電解コンデンサや電子部品、半導体が過熱されます。すぐに電源が停止することはありませんが、特に電解コンデンサは熱の影響を受けやすく通常なら4~5年以上寿命があることろ1年以内で寿命となることがあります。それで、少々電源の周囲温度が上がっても大丈夫なように大きめの電源を使います。

 

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電源を100%で使うと

仕様規格の動作温度範囲内で使う分には電源を100%負荷で使っても問題はありません。メーカーでも100%負荷で各周囲温度で動作試験をしています。

ただしメーカーの試験条件は電源周辺に自然対流がおこり、電源の熱は遮られることなく上へ抜けるようになっています。装置や制御盤に電源を使用した実際の状態はそこまで条件がいいとは思えません。

それと負荷率は電源の寿命に大きく関係します。負荷100%で使った場合と余裕をみて80%で使った場合、電解コンデンサの寿命(=電源の寿命)は約20%以上寿命が長くなります。メーカーの保証期間も周囲温度40℃、負荷率80%を基準にしていることが多く負荷率100%で使うと保証期間内に寿命になることも考えられます。

 

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