電池にはアルカリ乾電池のように使い捨ての電池(一次電池)と、充放電を繰り返し使える電池(二次電池)の2種類があります。つまり蓄電池とは1回限りではなく、充電をおこなうことで電気を蓄え繰り返し使用することができる電池のことです。スマホやノートパソコンなどに内蔵されているバッテリーはその代表的なものです。
まず蓄電池の出力と容量について説明します。
蓄電池の「出力」と「容量」の違い
蓄電池選びは「出力」と「容量」が重要ポイントになります。
「出力」は一度に出せる電力の量、バッテリーから取り出す時の瞬間的なパワーのことで、単位は「kW」や「W」です。
「定格容量」は1時間で動かせる貯められる電気量、単位は「kWh」です。一度にどのくらいの電気を使えるかです。出力が大きいほど同時に使える機器が多くなります。貯水槽の大きさが「容量」、蛇口から出る水の量が「出力」とイメージできます。
たとえば、LED照明(100W)、制御装置(190W)、計測機器(150W)を10時間使いたいと思った場合、必要な電力は合計440Wです。これらの機器を10時間使う時の必要な電力量は
440W×10時間=4400W(4.4kWh)になります。つまり、容量5kWhの蓄電池があれば余裕をもってまかなえる計算です。
応用編
100VAC入力の人工透析装置(入力電流10A)が停電しても最低2時間は動かしたい。48Vの鉛蓄電池を使い、充電は夜間(PM11〜AM7)に行うので8時間とします。
*夜間電力は昼間の三分の一程度
48V蓄電池の容量は100V×10A×2h=2,000Wh=2kWhあればいいのですが、普通は20%程度余裕を見て2kWh/0.8=2.5kWhの蓄電池を選びます。
電流容量は2.5kWh÷48V=52Ah、これを8時間で充電しますので52Ah÷8h≒6.5Aが必要です。
つまり56V6.5Aの定電圧定電流電源で8時間充電します
*48Vの鉛蓄電池の充電電圧は56Vで充電します。
知っておくと良い「放電終止電圧」があります。上の例では30Vがそれにあたります。
安全に放電を行える放電電圧の最低値のことです。上の48V蓄電池の例では30Vまでは放電しますがそれ以下になると放電しなくなります。無理に放電すると蓄電池の性能が落ちる原因になります。
そのため充電はこの放電終止電圧からのスタートになります。
蓄電池の種類
蓄電池には主に「鉛蓄電池」「ニッケル水素電池」「リチウムイオン電池」「NAS電池」の4つの種類があり、使用可能サイクルや用途に違いがあります。蓄電池の寿命は「サイクル回数」と「使用期間」の2つがありどちらか短い方が寿命になります。サイクル数とは充放電を1回とカウントします。
例えばニッケル水素電池は2,000回がサイクル寿命ですから毎日1回充放電すると約5年半で寿命となります。1週間で一回充放電する場合はサイクル寿命は38年ですが、使用期間5〜7年が寿命になります。
鉛蓄電池
用途・・・・自動車のバッテリーなど
使用サイクル ・・・・3,150回
使用期間・・・・17年
メーカー・・・・パナソニック、GS ユアサ等
鉛蓄電池は蓄電池の中でも最も長い寿命を持つ蓄電池です。自動車やオートバイの始動用12Vバッテリーとして汎用モジュール化されているためコストが安いこと(kWh 当たり 5 万円程度)がメリットです。ただし、過放電を行ったり、使用が終わった後に早急に充電するようにしないと劣化が早くなります。
ニッケル水素電池
用途・・・・乾電池タイプの蓄電池・ハイブリッドカーのバッテリー・鉄道やモノレールの地上蓄電設備
使用サイクル・・・・2,000回
使用期間・・・・5~7年
メーカー・・・・FDK(富士通系)、川崎重工等
ニッケル水素電池の寿命は5~7年と蓄電池の中でも最も短いですが、過充電や過放電に強く、急速充放電が可能でコンパクトなのでハイブリッドカーのバッテリー、鉄道用の地上蓄電設備などに使われています。ニッケル水素電池のコストは約 10 万円/kWhです。レアアースが使われていることもありこれ以上コストが下がる余地は少ないです。
リチウムイオン電池
用途・・・・ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器、EVなど
使用サイクル・・・・3,500回
使用期間・・・・6〜10年
エネルギー密度が高く小型で軽量にできることが特徴で最も注目されている蓄電池です。ただし、コスト高でkWh 当たり20 万円程度です。状態や蓄電池の温度によって劣化が早くなってしまうので、使用環境の管理も必要です。
NAS電池
用途・・・・工場などの大規模施設のバックアップ電源
使用サイクル・・・・4,500回
使用期間・・・・15年
メーカー・・・・日本ガイシ
NAS電池は鉛電池とほぼ同程度の長期寿命で低価格(約 4 万円/kWh)、従来の蓄電池の約3分の1の大きさから産業用蓄電池として注目されています。ナトリウムや硫黄といった危険物を使用しており、作動温度を300度に維持しなければならないため安全性について課題があります。