ファンの寿命
300W以上のスイッチング電源にはDCファンが付きます。山洋電気(産業用ファンメーカー)によるとスイッチング電源に使われるDCファンは「軸流ファン」に分類され、近年はモーターの性能もよくなってきており高風量で低騒音です。
DCファンの構造はプラスチック製の枠(ケーシング)と羽根(プロペラ)、羽根を回すモーター部がある軸受部品です。軸受部は他にボールベアリングとグリースで構成されています。ボールベアリングにも寿命があるのですが、普通は寿命にかかわるのはグリースです。DCファンは消費電力が小さくファン自体が自身を冷やしますので比較的長寿命です。山洋電気の一般的なDCファンは軸受部にあたる空気の温度が60℃で4万時間ありますので、スイッチング電源の電解コンデンサの期待寿命より持ちそうです。なお、ファンの寿命の定義ですがファンの回転数が当初から30%減少した70%になった時点ですので停止するわけではありません。
ファンの故障メカニズム
ボールベアリングは最初は滑らかに回転しますが、グリースは熱を持ちホコリも入ってくるので徐々にグリースが固くなっていきます。ボールベアリングが回転しにくくなるので摩擦熱でグリースがさらに熱を持ち固くなります。これを数年繰り返しファンの回転数が減ってくると最悪スイッチング電源内部に熱がこもり過熱保護(OTP)が動作しシャットダウンします。(ファンの回転数が減ると信号を出す機能があるモデルもあります。)
過熱保護機能がない電源はICのジャンクション温度に達すると発信停止し電源は止まります。ICのジャンクション温度まで上がらず電源が動作し続ける場合は電解コンデンサのドライアップ(容量抜け)まで急速に進みオープン故障します。ただし、稀に起こるケースですが電解コンデンサがオープン故障する前にコイルの一部分が高温になり飽和し大電流が流れ発煙発火することがあります。
ファンの寿命試験は恒温槽を使った加速試験です。ファン10台を恒温槽に入れ高温の環境で24h回転させます。どれか1台ファンの回転数が70%に低下した時点をファンの寿命としています。ファンの寿命は電解コンデンサのように化学式でなく機械的な部分が寿命にかかわっているため「残存率」という考え方です。
残存率とは、同時に回転させたファンの数に対するその時点でまだ回転しているファンの数の比率です。定格寿命と残存率の関係は、ファンの場合は残存率90%になる時間を定格寿命と規定していますので10%目のファンが停止した時間を意味します。この寿命はあくまで「期待寿命(実力)」であり保証寿命ではありません。ファンの保証寿命は一般的に1年です。