LED用スイッチング電源を選ぶ5つのポイント
基本はLEDモジュールメーカーが指定または推奨している電源を使います。ただし、LEDモジュールの中には電源を指定や推奨していない場合や電源の納期が間に合わない場合があります。その場合は独自に電源を選定しなければいけません。
まずは定電圧電源か定電流電源かを確認します。確認後電源を選びますが、選定する上で重要なポイントが5つあります。①周囲温度と②負荷率(ディレーティング率)③寿命④PSE ⑤IPです。
①周囲温度
周囲温度とは看板内の電源周りの温度をいいます。看板周りの外気温ではありません。屋外看板は昼間は点灯しませんが、直射日光が当たる真夏の看板の中の温度はかなり上昇しています。夕方看板が点灯する頃でもまだ看板内の温度は下がらず、そこへ西陽が当たるとさらに温度が上昇します。
看板にはスリットを開けるなどしてスイッチング電源の周囲温度を50℃以下に抑えてください。それでも無理な場合はスイッチング電源自体を筐体や金属部に接触させ放熱させる方法があります。実際、金属筐体に接触させることで4〜5℃電解コンデンサの表面温度が下がり寿命が1.4倍伸びた例もあります。
反対に北海道や東北、内陸の高地では真冬はマイナス20℃以下になります。マイナス20℃でコールドスタートできる電源はありません。その場合は消灯せず24時間点灯させておいた方が電源にとってはいいのです。
②負荷率(ディレーティング率)
負荷率はディレーティング率ともいい、定格電力の対してどれくらい使っているかをパーセント表示したものです。一般的には80%前後で使われることが多いです。屋外看板など温度条件が厳しい場合は負荷率を50%以下で使うとスイッチング電源自体の発熱が抑えられ寿命が伸びます。別の言い方をすればつなげるLEDモジュールの数を減らしたり、スイッチング電源の容量(W)を大きいものにすることです。
③寿命
スイッチング電源の寿命に関係するのは電源の「周囲温度」と「負荷率」です。これを下げることでスイッチング電源の寿命を伸ばすことができます。
スイッチング電源メーカーのHPにはそれぞれ電源ごとに「電解コンデンサ寿命計算値」のデータが開示されています。縦軸に寿命、横軸に負荷率のグラフがあります。表中にはスイッチング電源の周囲温度ごとに折れ線グラフで示されていますので参考にしてみてください。*各スイッチング電源メーカーによって形式は様々、開示していないメーカー、機種もあります。
④IP規格
IPは防水規格のことで固体と液体の侵入に対してどれだけの保護が施されているかの目安になる規格です。IP規格はIEC(国際電気標準会議)が定めた規格です。例えばIP67と表記されている場合、最初の数字「6」が防塵性能を表わし、最後の数字「7」が防水性能を表しています。
ちなみに「IP」とはIngress Protection(進入に対する保護)という意味だそうです。
なお、JISにも防塵防水規格がありますが現在はIP規格コードに合わせていますので同じと考えて差し支えありません。
屋外看板に使う場合のIPは65か66以上になります。水がかからなくても屋外の気温差によりスイッチング電源に結露がつきますので最低それくらいの保護は必要です。ただIPを取得したスイッチング電源は少ないので、使おうとしているLEDモジュールにIP規格を取得した電源が用意されているのかどうかを確認した方がいいです。
番号 | 防塵性能の数字 IP◯X | 防水性能の数字 IPX◯ |
0 | 保護されてない | 保護されてない |
1 | 手ほどのもの(50mm)が入らない | 真上からの水滴に対する保護 |
2 | 指ほどのもの(12mm)が入らない | 真上からの水滴に対し対象物を15°以内に傾ける保護 |
3 | 工具など(2.5mm)が入らない | 真上からの水滴に対し対象物を60°以内に傾ける保護 |
4 | 針金など(1mm)が入らない | あらゆる方向からの水の飛沫の保護 |
5 | 粉塵が入らない | あらゆる方向からのノズルによる噴流水に対する保護 |
6 | 完全密閉 | あらゆる方向からの強い噴流水に対する保護 |
7 | 一時的な水没に対する保護 | |
8 | 継続的な水没に対する保護 |
さて、スイッチング電源の故障の原因は施工不良によるものが大半です。雨ざらしの場所にスイッチング電源を設置したり、屋根はあるのですがひさしの下の雨樋にスイッチング電源を設置したり、看板の底面にスイッチング電源を設置したところ雨水が看板の底に溜まり電源に水が入ったりなどです。スイッチング電源が完全密閉型の場合は電源内部に直接水が侵入することは少なく、スイッチング電源と入力線や出力線の結線方法が十分でないことが原因で水が侵入することが多いのです。
IP試験方法
試験方法はIPの数字により異なりますが、例えばスイッチング電源の防水性能試験の場合は10分から30分くらい水をかけたり水没させた後、スイッチング電源を動作させ出力するかどうかを確認します。スイッチング電源を分解して水が侵入したかどうかを確認するわけではありません。
極端に言うと水がスイッチング電源内部に侵入しても出力さえすれば合格です。これはIPの試験方法がそうなので仕方ありません。また、このIP試験は試験をした時の性能を確認しましたというだけで、1年後2年後・・もちろん10年後の性能を保証しているわけではありません。IPの試験を過信せずどちらにしても水が直接・間接的にもかからないような設計をすべきです。
⑤PSE
LEDモジュールの電源はPSEを取得した電源でないといけないわけではありません。PSE取得が必要な電源は「組込み用電源」ではない電源です。
まず「組込み用電源」とは何かですが、装置に組み込むことを前提に使用される電源で、具体的には装置に取り付けるための「つば」があり端子台やコネクタで結線する電源です。つまり最終製品ではありません。このサイトで扱うスイッチング電源はほとんど組込み用電源ですのでPSE対象外になりPSEを自己宣言すること自体できません。
「組込み用電源でないもの」とは(装置に組込みことを前提にしない)その電源単体で使われ売買される電源をいいます。具体的にはAC交流入力で全面がケースやカバーで覆われ、入出力がハーネスのものです。こういった電源は第三者機関で試験確認してもらった上でPSE自己宣言することになります。
LED看板の中に普通の端子台の電源を内蔵した場合、電源はPSE対象外ですがLED看板自体がPSE対象製品になりPSEを取得する必要がでてきます。ただPSEが必要な看板はよく店舗前に置いてるポータブル型の看板です。ビルの壁面看板や袖看板、コンビニのファザード看板などは一般の消費者が触ったりすることがないので対象外となります。