欧米で強まるファーウエイ排除で国内基地局メーカーが復活

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携帯電話と電波のやり取りをしているのが基地局です。携帯電話と電話網の間の通信を中継する役割を持っています。一つの基地局で通話できる携帯電話の数は限りがあるので、都会では地方より多くの基地局が設置されています。基本的に基地局は電波を発射する「アンテナ」と「送受信機」で構成されています。

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国内の5G基地局市場

 

次世代移動通信方式「5G」の商用サービスは日本では2020年3月に開始しました。5Gは4Gに比べて100倍通信速度が早く、1000倍の大容量通信、超低遅延、多数同時接続が特徴です。スマホで超高精細で映像を伝送できたり、自動運転、建設機械を遠隔操作したり、遠隔医療など様々な分野での活用が想定され、あらゆるものがつながる「IoT」の基盤としても期待されています。

 

映画のダウンロード

映画をダウンロードする男性

身近な例では、2時間の映画をダウンロードする時間は4Gだと5分程度かかっていたのに対し5Gだと3秒です。受ける方のパソコンの処理速度も関係しますが、4Gの100倍高速大容量のデータを送れます。最近では次の6Gの話も出てきており、6Gだと2時間の映画は0.1秒でダウンロードできるそうです。ここまでくると民生では6Gは必要なく5Gで充分です。ただし軍事関連になってくると話が違ってきます。戦闘機やミサイルの情報処理速度は0.1秒は命に関わる差です。

総務省は先月、新たな「ICTインフラ地域展開マスタープラン プログレスレポート」を発表し5G基地局を2023年度末をめどに当初開設計画の3倍となる約21万局以上に目標に変更しました。

大手キャリア4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)は2021年12月までに人口カバー率90%達成を目標として5Gのインフラ整備を進めています。今後5年間でNTTドコモは7,950億円、KDDIは4,667億円、ソフトバンクは2,061億円、楽天は1,946億円を投じると発表していますが実際はあまり進んでいません。

その原因は5Gのネットワークを支える基地局の整備に従来以上のコストと時間がかかることにあります。基地局1基あたりの費用は約1,000万円ですが、5Gは4Gより高い周波数帯のためを直進性が強く雨などで減衰しやすいので基地局をこれまで以上に設置する必要があるのです。全国に5Gネットワークが整備されるまではかなり時間がかかると思われます。

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5G基地局の機器を共通仕様にする「オープン化」

NTTドコモが中心となり5G移動通信システム(基地局)を共通仕様にする「オープン化」を進めています。既に2018年アメリカのAT&Tなど世界の携帯大手と「O-RAN」という団体を設立し、仕様の国際標準化に着手しました。この団体にはファーウエイを除いた200社がこの団体に加わっています。これは基地局でシェアトップの中国のファーウイを安全保障を理由に排除する動きがアメリカで強まっていることがその背景にあります。イギリスも5Gの移動通信システムからファーウェイを排除する方針を発表、フランスも通信会社に2028年までにファーウェイ製品を排除するように通達したことが明らかになっています。

ファーウェイ製品は競合より2~3割安く、品質も高いことから各国で採用が進んできました。富士キメラ総研によると「世界の5G基地局市場は2019年は4.6兆円、2025年は11兆3530億円」で市場シェアは1位のファーウェイ、以下スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの3社で8割を占めています。アメリカのモトローラーやAT&Tもありそうなのですが入っていません。アメリカも基地局のモノづくりは中国に持っていかれたのです。

一方、日本メーカーは国内向けのみでNECや富士通の基地局の世界シェアは1%未満です。なぜこんなに日本メーカーのシェアが低いのでしょうか?携帯電話と同じで国内にそこそこ需要があるので特徴ある機能にこだわった結果、ガラパゴス化が進み世界では戦えなくなったのではないでしょうか?

 

また、携帯基地局の仕様はメーカーごとに違いますので異なるメーカーの装置を接続できません。基地局メーカーは異なるメーカーの機器をつないで動作できないようにして顧客を囲い込んでいるのです。仕様を共通化することで最適なメーカーの製品を組み合わせて基地局を構成できるようになり複数のメーカーからコストを抑えた最適な製品を選べるようになります。複数のメーカーから選択できれば競争が進み、ファーウエイと遜色ないレベルまでコストが下がる見通しです。今こそ基地局の仕様を統一して世界市場に打って出る時です。

今までは安くて性能がいいことが一番の選定ポイントだったのが、安全性・信頼性が基地局や監視カメラなどの情報通信と国の安全保障に関わる装置を選定する場合には重要なポイントになりました。日本メーカーの製品は安全性と信頼性が普通にあるので特に意識しませんが、製品の安全性・信頼性があれば少々高くても売れる時代になったことを意味します。

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携帯基地局の電源とは

通信デバイスのCPUやFPGA、メモリは超小型・高速負荷のため、無線基地局用の電源装置は小型で高効率、高信頼性、高速負荷応答かつ安定した電力供給が必要となります。5Gの基地局は4Gの基地局よりも2〜3倍の電力が必要ですが、従来の4G基地局の筐体に収まるよう電源基板の実装密度を上げEMIにも考慮する必要があります。

電源は分散給電方式がとられAC/DC部とDC/DC部から構成されます。
AC/DC部(フロントエンド電源)はAC200V入力を力率改善しDC48Vへ変換します。通信用のバス電圧は48Vの理由ですが、当初12V鉛蓄電池を4直列にして使っていた名残だとか、ある程度出力が必要なので12Vや24Vだと電流値が大きくなってケーブル径が太くなること、また100Vにまでになると安全上の問題があり48Vが丁度いい電圧だったようです。

フロントエンド電源は容量が大きければ2,000〜3,000Wのユニット電源を使用し、1000W以下であればパワーモジュールを基板上に搭載します。屋外設置のため密閉構造で基板の防湿処理が必要です。また形状も鉄塔に設置しやすい薄型形状で入出力コネクターは底面に集められます。この屋外用電源装置としてシェアNo.1のサンケン電気があります。

DC/DC部(バスコンバータ)では48VをDC/DCコンバータで24Vまたは12Vに降圧します。さらに24Vまたは12VからPOLコンバータでASICなどの電子部品に必要な3.3Vから1V未満の多く電圧に降圧します。

さらに電源を停止させることなく電源ボードの抜き差しができる活線挿抜(Hot Swap)と停電時にも電力が供給できるよう外部にはバッテリーも必要です。そのため携帯基地局の電源とバッテリはセットで使われます。サンケン電気は電源事業をGSユアサへ事業譲渡することによりパワー半導体事業へ集中することができ、一方GSユアサにとってはバッテリ事業とのシナジー効果が見込まれます。

 

大手キャリア4社の購入メーカー

 

 

基地局の中国メーカーがチャイナリスクにより勢いを失う一方、欧州メーカーが勢いを増しています。

NTTドコモはNECと富士通、ノキア(フィンランド)の3社から5G基地局を調達しますが、NECはサムスンから富士通もエリクソン(スウェーデン)から装置を購入しています。

ソフトバンクは基地局は先端技術を低価格でいち早く手に入れるため海外メーカーを積極的に採用していました。4Gではファーウエイでしたが、米中貿易戦争を発端としたチャイナリスクを背景に5Gではエリクソンとノキアに戻っています。

KDDIは5G基地局のメーカーとしてはエリクソンとサムスン電子、ノキアの3社を選定しています。基地局数は2022年3月末までに1万622局、2024年3月末には5万3626局まで増やす計画で国内最多です。

楽天モバイルはNECを5Gの基地局ベンダーに選定しました。NECの機器が小型軽量で基地局の設置スペース確保を含めて他社製品よりもトータルコストを抑えられる点が評価されたそうです。

 

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