スイッチング電源に搭載される電子部品
スイッチング電源には多数の電子部品が使われています。回路設計が出来なくても、部品名と役割を理解しておけば電源回路ブロックを理解出来ます。
100Wの基板型電源に搭載されている電子部品で説明します。
- ブリッジダイオード(整流ダイオード)・・・・4つのダイオードを一つにパッケージ化したモジュールで、交流波形を直流の全波整流にします。
- バリスタ・・・・電圧によって抵抗値が変化する特性を利用して、静電気や雷サージからICなどの素子を保護するために使用します。
- セラミックコンデンサ(キャパシタ)・・・・電気(電荷)を蓄えたり、放出したりする電子部品。
- Xキャパシタ(コンデンサ)・・・・・電源ラインの相間(線間)に接続し、線間を高周波的に短絡することで、雑音端子電圧のノーマルモードノイズを低減する役目です。
- チョークコイル(インダクタ)・・・・放射ノイズの発生源となるコモンモードの成分だけを選択して除去します。
- MOSFET・・・・Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor の略で「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ」と訳します。このMOSFETでスイッチングして電圧を制御しています。
- フォトカプラ・・・・LEDと受光素子(フォトダイオード)をICのパッケージに入れたもの。LEDに電流を流すと受光素子がONします。LEDと受光素子は電気的に絶縁されています。
スイッチング電源の使用例
VPNルーター
企業のセキュリティ対策のため設置されるVPNルーターです。ホコリも少なく空調のきいたサーバー室で使用されます。電源は75W程度の単出力の基板型電源が使われます。装置ケースに入れるためL板金とカバーは必要ありません。以前は海外向けと国内向けに分けていましたが、最近はAC100V専用入力電源とAC100/200Vワイド入力の価格差が小さくなったこともあり、海外向けと国内向けは共通化しています。
制御盤
工場やビル・マンションなどの機械・装置を制御するためのに使われる電気制御盤です。電源は24V出力でDINレールにはめて使うタイプのものがよく使われています。最近では通信機能を備えたものも発売されています。
ホームドア
国交省が10年くらい前から積極的に導入を各鉄道会社に進めてきたこともあり、よく見かけるようになりました。目の悪い方が誤って線路に転落する事故防止には効果大です。ホームドアは制御部とセンサ部に分かれていて制御部は制御基板とモーターを動作させる5V/24V出力、センサー部は12V出力の50〜150W程度の電源が使われています。振動や鉄粉などホコリも多く決して環境はよくありません。
FA工作機械
CNC旋盤(コンピューター制御)、マシニングセンター(自動工具取替え機能)、レーザー加工機など多くの工場で稼働しています。24時間運転することもあり装置が止まるとラインがストップするので価格よりも電源の実績・信頼性が重要視されます。ここで使われる電源はユニット型の5Vか24Vの単出力電源が多く使われています。
CTスキャン
病院の検査室に設置されており稼働時間も少なく電源の環境条件は非常にいいです。電源はモーター駆動用の24V出力電源が使われています。電源の設置スペースが少なく600W程度の電源を分散するなどの工夫をしています。
FAロボット
数年前のアベノミクス規制緩和でモーター容量などの規制を満たせば作業員の隣でロボットを動作させることができる(協働ロボット)ようになりました。電機・電子メーカーの基板アッセンブリ工程の人の腕の動きは「双腕ロボット」の水平の動きに代用させることができます。ロボットの腕は柔らかい塩化ビニルでできており人が触れるとセンサーで自動でストップします。人手不足の流れもあり各ロボットメーカーから様々なタイプの製品が発売されています。
人工透析機
空調のきいた病室内で使用されますので環境条件はとてもいいです。電源はIECの医療規格を取得したマルチ出力電源が使われます。容量は600W程度で絶縁性と低リーク電流が要求されます。また装置全体で医療規格を取得していることもあり電源を変えることはできません。
LED看板
LED看板は屋外で使用されることもあり電源には防水性・防塵性が必須です。IP規格を取得しかつPSE認定の電源が使われています。また看板に直射日光も当たり看板内の温度は高くなりますので環境条件は非常に厳しいです。電源はLEDモジュールの種類により定電流電源と定電圧電源どちらも使われます。
スタジアム大型ビジョン
最近はほとんどの野球場やスタジアムなどに設置されている大型ビジョンです。数千台のLEDモジュールを並べて構成していますので、LEDの色合わせが一番の肝になります。LEDのVf値のばらつきの少ない国内LEDメーカーが使われることが多く、電源はLEDモジュールにそれぞれ1台搭載されています。