スイッチング電源の基本【中級編】仕様項目と規格について

スポンサーリンク
この記事は約5分で読めます。

電源の基本的なことはわかっている人

「仕様書の項目を詳しく知りたい。
自分で仕様書を読めるようになりたい。
規格関係も教えて欲しい。」

こういった要望に答えます。

スイッチング電源の基本【初級編】回路と理論抜きでわかりやすく解説があります。

スポンサーリンク

仕様書の主な項目

仕様書で覚えていたらいい項目です。

効率と力率

力率は入力電力をどれくらい有効に使っているかを示します。
0.6とか0.98の数字で表記します。力率改善回路がないと0.6程度ですが力率改善回路があると0.95以上になります。
「0.6」は入力電力の60%が使われ残りの40%は使われず入力ラインに戻ります。「0.98」は98%が有効に使われ、2%が戻りますという意味です。

電力計には使われずに戻った電力(無効電力)を差し引いた電力量が表示されますので、無効電力が電気料金にカウントされることはありません。

では力率改善するメリットは何でしょうか?
それは入力電力を小さくすることで線材の太さや入力側の部品を小さいものにできます。それだけでなく入力電気設備や契約電力量にも影響しまので大幅なコストダウンになることもあります

 

力率と効率の式です。

力率=有効電力÷皮相電力
効率=出力電力÷有効電力

有効電力は負荷装置で消費される電力(W)です。
皮相電力は電源の入力電圧(V)×入力電流(A)で表されます。有効電力と無効電力の合計です。
単位がVAなのは消費電力ではないからです。

では、実際に100W24V出力の電源の仕様書から出力電力を計算してみます。
この計算できる人はあまりいません。

  • 入力電圧 AC200V
  • 入力電流 0.65A
  • 力率   0.93
  • 効率   89%

皮相電力は200V×0.65A=130VAです。単位がVAなのは消費電力ではないからです。
皮相電力130VAの力率0.93が有効電力なので130VA×0.93=121VA(W)となります。
有効電力121Wが効率89%で出力電力になりますので121W×0.89=108Wとなります。

仕様書の出力電力を見ると108Wで合っていました。

なお、損失電力=有効電力−出力電力=121W−108W=13Wです。

 

突入電流(A)

入力サージ電流とも言います。
入力投入時、入力の平滑用コンデンサに流れ込む最大瞬時電流です。AC200V入力はAC100V入力の倍になります。

以下の表はおおよその目安です。電源容量や出力電流にはあまり関係ありません。

AC100V AC200V
150Wまで 15A 30A
300W以上 20A 40A

 

また突入電流はスイッチやヒューズ、ブレーカーを選定する際に必要な値でユーザーからよく聞かれます。突入電流が流れる時間は5ms以下です。
ブレーカーなどのデータ中に「電流値と時間」の表がありますので、時間が5ms時の電流値を確認してください。電源の入力サージ電流より大きい電流値が流せる部品を選定してください。
これは大まかな考え方ですので、実際の選定は各メーカーに問い合わせてください。

また電源を複数台使用した時の入力サージ電流はそれぞれの電源の突入電流の合計になり大きな値になります。

漏洩電流(mA)

漏れ電流、リーク電流とも言います。
入力線から筐体を通して大地へ流れる電流値です。

大地へ流すことで雑音端子電圧を減衰させるメリットもあります。
そのため低リーク電流の電源は雑音端子電圧は下がりません。

漏洩電流は感電の安全面から各国の安全規定により規定されています。
特に人体に接触する医療機器は漏洩電流の基準は厳しいです。

医療機器全体で漏洩電流が規制されますので、電源の漏洩電流と他の部品の漏洩電流の合計値になります。
また電源を複数台使用した時の漏洩電流はそれぞれの電源の漏れ電流の合計になります。

保持時間(ms)

電源の入力遮断後、出力電圧が低下し始めるまでの時間です。

保持時間は20msが一般的です。負荷率100%時の保持時間です。
負荷率が下がるほど保持時間は伸びます。
保持時間を伸ばすには大きめの電源を使うこともあります。

ユーザーは停電や瞬時停電の際に、この保持時間を利用してデータのバックアップをします。

過電流保護(OCP)

出力電流が規定値以上に流れないように出力電流を制限し出力電圧を低下させる電源を保護する機能。

過電流保護が動作すると出力電圧が下がりますが、その下がり方は3通りあります。

・垂下方式
・フの字方式
・への字方式

垂下方式は過電流保護が動作した電流値がそのままで電圧だけがまっすぐ下に下がります

フの字方式は過電流保護が動作すると電流値も電圧値も両方下がります。自動復帰しにくい

ハの字方式は電圧が下がりますが電流値は反対に無制限に流れてしまいます。
ローコスト品に多い方式で発煙発火の可能性があります。電源がどの方式か確認した方がいいです。

過電圧保護(OVP)

出力電圧が定格電圧以上に上昇した場合に出力を停止する機能です。過電流保護が電源自身の保護に対し過電流保護は負荷を破壊しないことを目的にしています。

過電圧保護は定格電圧の105%以上で動作します。動作すると出力停止します。
電圧はすぐに(真下に)下がるのでなく徐々に電圧は下がります。

また、過電流保護のように自動復帰しませんので、出力するには入力電圧をOFFしてから再度入力します。

リモトートセンシング

電源の出力端子から負荷までの間の電圧ドロップ分を補正する機能です。
端子台やコネクタに+S、−Sの箇所がリモートセンシングです。

例えば電源の出力端子では5Vが出力されているのに対し負荷側では4.9Vだったとします。
この例では0.1Vが電圧ドロップしていることになります。

リモートセンシング機能を使うと電源は0.1Vをプラスした5.1Vを出力するということです。
+S端子を負荷の+と−S端子を負荷の−と接続します。

リモート(ON/OFF)コントロール

略してリモコンとも言います。

入力したままコントロール信号により電源出力をON/OFFする機能です。

コントロール信号の方法はモデルにより方法が違います。
例えばある端子間に5Vの電圧をかけるとONになり、1V以下の電圧をかけるとOFFになります。

この機能を使うと突入電流は発生しません。

全メーカーのスイッチング電源を一括検索できます。

納期遅れによる代替え機種検索に!

タイトルとURLをコピーしました