スイッチング電源を東南アジアなどの湿気の多い国や海岸沿いで使う場合、湿気・塩分によるさび対策として電源基板に防湿処理をした電源を選ぶことがあります。
電源メーカーは基板のコーティング剤に「ヒュミシール」を使って防湿処理をします。
実績もあり特に不具合もないことから一般的に使われています。
ヒュミシール(HumiSeal)とは
米チェイスコーポレーション(ヒュミシール事業部)が1990年代に軍事用向けに開発したコーティング剤です。耐湿性に優れ基板用絶縁、防湿コーティングとして車載基板、電子・電気制御基板などに幅広く使用されています。
チェイスコーポレーション
1946年に米国マサチューセッツ州ランドルフにチェイス親子により設立されました。
最初の製品は布おむつに着用されるゴム製のベビーパンツでした。
現在は約800人の従業員を擁する保護材料の大手特殊化学品企業に成長しています。
生産拠点は米国・欧州・アジアにあり、アジアは中国蘇州に工場があります。
ヒュミシールの効果
ヒュミシールを塗布すると以下の効果があります。
防湿性
通常の湿気のほか海水の塩分を含んだ湿気も防ぐことができます。
汚染物質の除去
大気汚染物質を除去し電子基板を守ります。
通気性
回路基板に閉じ込められた水分を外へ逃します。
絶縁性
コーティング表面は絶縁抵抗を維持する保護層ですので電気的に絶縁されています。
ヒュミシールの塗布方法
塗り方は4通りありそれぞれ長所・短所があります。
長所 | 短所 | |
刷毛塗り | 設備費用が不要 | 作業員が必要。コーティング品質に差がでる。作業に時間がかかる。少量のみ。 |
ドブ漬け | 数量が多い場合に適している。コーティング品質が一定 | ドブ漬けできるものは限られる。広い箇所のマスキングが必要。 |
スプレー | 設備費用が不要。数量が多い場合に適している。少しのマスキングですむ。 | 作業員の技術によりコーティングの品質が決まる。 |
塗布装置 | この中で最も生産性が高く数量をこなせる。最もコーティングの品質が一定。最小限のマスキングでOK。必要な箇所のみにコーティングできるので効率的。 | 装置の購入費用がかかる。 |
電源メーカーがスプレー装置を自社設備で持っている会社はなく、作業員による刷毛塗りかスプレーです。
基板コーティング
スイッチング電源の基板コーティングはオプションで用意されています。
部品面だけにコーティングする「片面コーティング」と裏面にもコーティングする「両面コーティング」の2種類あります。
電子部品は基本的にコーティング剤を塗布することはNGです。
ただし、電源メーカーは今までの実績・経験上コーティングしても問題ないことをわかっていますので独自の判断でコーティングをしています。もちろん絶対に塗ってはいけない部品には塗りません。
実際の作業ですが、刷毛塗りは作業員が作業指示書を見ながら慎重に、ハンドスプレーの場合はマスキングした後にスプレーをします。
コーティングは手間がかかる上に乾かす場所と時間が必要になります。作業後のヒュミシールの管理もしっかりしないと乾いて使えなくなります。